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「僕、群れるの嫌いなんで」一匹狼・梅津晃大はドラゴンズのエースになる!

文春野球コラム ペナントレース2020

 ずっとプロ野球開幕を待っていました。僕たちファンも待っていたし、選手たちも待っていたと思います。あまりに嬉しくて、思わずツイッターで野球のことばかりつぶやいていたら、フォロワーが100人ぐらい増えてありがたかったです(笑)。

©辻本達規

 開幕戦に勝って、「今年はいける!」と思ったドラゴンズ。現在は負け越していますが、まだシーズンは始まったばかり。山本拓実投手のようなイキのいい若手と、大島洋平選手のようなベテランの力が噛み合ってくれれば、優勝を狙える力は十分あると感じています。今、僕も含めてドラゴンズファンが熱い視線を送っているのが、開幕3戦目で投げた梅津晃大投手です。

 150キロオーバーの直球を投げる身長187センチの大型右腕。昨年はケガで出遅れましたが、後半戦から登場して4勝1敗の成績を挙げました。ルックスは笑顔がふにゃっとしていて、さわやかで、とても優しそうな好青年そのもの。今年のキャンプでは女性ファンが長蛇の列を作っていました。

梅津晃大

垣間見えた梅津投手の意外な素顔

 梅津投手とは、僕は去年の年末に取材でお会いして、かなりお話しさせてもらいました。

 負けん気が強くて、唯我独尊。

 意外かもしれませんが、それが話していて僕が受けた印象です。気の強さは言葉の端々から感じられました。目標を語ってくれたときも「○○勝します」「○○をやります」と全部しっかり断言してくれる。「自分を信じているんだな」と強く感じました。

 意外だったのが、「仲の良い選手はいるんですか?」という質問への答え。

「あんまりいないですね。僕、群れるの嫌いなんで」

 梅津投手の言葉を聞いて「一匹狼タイプなんだ!」と驚きました。このような雰囲気を出している人もいますが、ハッキリと言い切る人は多くはありません。それをサラッと自分の口から言えるところがすごい。そういうイメージを梅津投手にまったく抱いていなかったので、聞いていて思わず息を呑みました。

 性格は根っからのピッチャーという感じです。僕が感じるピッチャーらしい性格というのは、「マウンドを譲りたくない」「ここは俺の場所だ」と心の底から思っている人。野球は9人で戦うものですし、ピッチャーの後ろには仲間の野手が守っていますが、やっぱりピッチャーはバッターと1対1の勝負。打たれてヒットゾーンに飛べば、アウトにすることはできません。「俺が抑える!」という気持ちが強くないと――僕は経験したことがないのですが――プロのマウンドでは勝てないのではないでしょうか。

 僕は高校まで野球をやっていて、ピッチャーも務めました。「相手をねじ伏せてやろう」という気持ちはそれほど強くありませんでしたが、バッターのスイングを見ればだいたいどの程度の実力かがわかるので、「たいしたことねぇな」と思いながら投げていました。僕も「お山の大将」だったと思います。ところが、年々打たれるようになり、打たれれば打たれるほど強い気持ちは薄れていきました。

 プロには学生時代とは比較にならないようなすごいバッターがたくさんいて、当然打たれることもあります。それでもビビらずに強い気持ちでマウンドに上がり続けなければいけないプロの投手は本当に大変だと思います。プロのピッチャーは技術だけでなく、メンタルもプロなんです。打たれた相手にまた立ち向かっていくには、「負けん気」と「自分を信じる力」が強くなければいけない。梅津投手はその両方を十分に持っているようです。

©辻本達規

 もう一つ、梅津投手と間近で接して感じたのは「野性味」です。そういう人がマウンドに立っていると、すごく惹きつけられますよね。マウンドでのガッツポーズは川上憲伸さんを彷彿とさせました(笑)。ファンが球場に足を運びたくなるピッチャーだと思います。

 憲伸さんもそうでしたが、「大事な試合で勝つ」のもいいピッチャーの条件だと思います。梅津投手の今年の初登板は開幕カードの第3戦、しかも2戦続けて先発投手が崩れて臨んだマウンドで堂々と投げきった。勝負事になると自分でスイッチを入れて、野性の血をたぎらせることができるのでしょう。優しげに見える梅津投手ですが、実は、星野仙一さん、郭源治さん、川上憲伸さんのような「燃える男」の系譜に連なる一人なのかもしれません。