1ページ目から読む
2/2ページ目

辛島なのか本当か、角度的には西川か? 清宮だったら面白い

 あれ? 見える??

 ファンシーな馬車と白馬の間、遠く微かに見えるマウンドらしき白いプレート。目を細め遠くを見ると、豆粒大の選手の姿……。

 

 おお……見える……!!

ADVERTISEMENT

 しかし、誰かはわからない……。

 辛島なのか本当か、角度的には西川か? 清宮だったら面白い。そんな気持ちわかるでしょうとつぶやきながら、こんなことなら一番町の『メガネの相沢』に立ち寄って遠近両用メガネを買ってくればよかった、と選手らしき人影が見られた嬉しさとともに浮かぶ後悔の念。

 

 ふと、メリーゴーラウンドの上を見上げると観覧車がゆっくりと回っている。ああ観覧車に乗れたら試合見られるんじゃないかなあ……と妄想していると、本日観覧車無料の看板が目に入ってくる。え? 観覧車乗れるの? そして無料なの!? 思わず目を疑ったがどうやら本当らしい。

 

 さっそく観覧車に乗り込む。

 ゆっくりと高度を上げる観覧車。徐々に球場の全景がみえてくる。

©ハガユウスケ

 おお……見える…!! 見える……!! 見えるううう……!!!!

 ああ、この高揚感。ボクは球場に来ているんだ球場に来ているんだ何も知らない観覧車の内側で、と誰かに何かを伝えたい、なんだかあいみょんみたいな気分となるこの感じ。テンション上がりっぱなしの6分あまりの遊覧を満喫し、観覧車をおり芝生席へと戻った。

 気づけば試合は終盤。イーグルス4点ビハインドの8回裏。茂木の死球、大地のライト前ヒット。そしてブラッシュ2ランで一気に2点差となり浅村のヒットが続いたとき、スマイルグリコパークは最高潮に達した。

 その雰囲気に押され、我慢していた自分のなかの何かがはじけ、おもわず少しだけ声量があがりチャンステーマを口ずさむ。周りの観客を見渡すと、遠慮がちにタオルを掲げ、マスク越しに声援を送っていた。

 みんな、応援がしたいんだ。プロ野球がみたいんだ。

おっきな声で「もーぎーえいーごろー!」って歌いたい

 8回の追い上げも及ばず、この日は残念ながらファイターズに負けてしまった。

 試合の余韻にひたりながら宮城野通を駅に向かってゆっくりと歩く。

 7月10日以降、NPBは政府方針に従い5,000人をメドにした有観客試合をはじめる。イーグルスも14日ライオンズ戦の主催試合から観客を入れる。原則として座席は前後1列、左右2席の間隔を空ける。ライブビューイングでは販売中止だったアルコールの販売も検討されているようだ。

 果たして試合が盛り上がったとき、ソーシャルディスタンスルールを守って観戦できるのだろうか? 

 正直いってしまうと、ボクは自信がない。

 マスクは、きっとつけるけれど、終盤のいいところになれば、声をだして声援を送ってしまいそうだし、タオルだって回したい。おっきな声で「もーぎーえいーごろー!」って歌いたい。

 ただ再びコロナが蔓延してしまうと、プロ野球の開催中止も余儀なくされる。だから、みんなで我慢するところは我慢して、あたらしい応援の方法や楽しみ方を模索していくしかない。

 仙台サンプラザ前。JR榴ケ岡駅の地下へくぐった時の冷房の冷たさに、夏日を思い出す。ああ今日暑かったな。マスクの日焼け跡がうっすらと残り、額がヒリヒリしていた。

 だけど、やっぱりあの球場の雰囲気は何物にも代えがたかった。

 早く普通にプロ野球が見られる日がきますように。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/38667 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。