発作的に起こる球場生観戦への禁断症状がもう限界

 

 ギギ、ギギギ……(歯ぎしりの音)。

 ああ……アアアッッ!!! 生で……ナマで野球が見たい!!!!

 6月19日にプロ野球が開幕。プロ野球ははじまった、しかし無観客試合。テレビやネット、ラジオ中継でみる(きく)しか野球を楽しむ手段はない。

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 発作的に起こる球場生観戦への禁断症状は、超絶MAX限界宣言。

『異世界転生したら、球場のトンボだった件』、というなろう系小説を本気で書いてしまおう、かと思うぐらい発狂と狂気の狭間に追い込まれてしまったボク。

 県またぎも可能になった6月28日、いてもたってもいられず楽天生命パーク宮城(以下、楽パ)へと向かった。そう、ライブビューイングのチケットを確保して。

 我が楽天イーグルスは、楽パ隣接の「スマイルグリコパーク」にて試合観戦ができるライブビューイングイベントを開催していた。どうやらこの無観客開催の期間、球場隣接エリアでライブビューイングが実施されるのは12球団でイーグルスだけのようだ(※注:カープは開幕戦の際、地元民向けにビジター試合のパブリックビューイングをマツダスタジアムで実施)。

 スマイルグリコパークは、キッズが喜ぶメリーゴーラウンドや、ぼよんぼよんと飛び跳ねる遊具があったり観覧車が設置されている、楽パレフトスタンド奥の院。

 試合が行われている目と鼻の先でのライブビューイング。

 当日の球場周辺は雨予報、しかしこれはなんとしてでも行くしかないだろうと、チケットを購入し球場へと向かった。

 

心の中で熱く声援を送る“寸止め応援”で選手にエール

 JR仙台駅東口についた段階で、もうそわそわである。

 普段なら試合開催時に運行されているはずのシャトルバスは、コロナで運休していた。一刻も早く球場に着きたいあまりタクシーに乗り、宮城野通を飛ばしてもらう。球場へ到着すると、正門入ってまもなくのところに、本日のスターティングメンバーのパネルが飾られていた。

「おお、スタメン、内田じゃん!」

 野球少年っぽい小学生とお父さんの親子がパネルを見ながら嬉々と語り合っている。

 これぞ、素晴らしきプロ野球のある風景かな。

 球場内から漏れ聞こえてくるウグイス嬢やDJの声に心なしか早歩きになる。レフトスタンド方向10番ゲートを通過し、検温・持ち物チェックを行い、いざ「スマイルグリコパーク」内へ。

 さああああ!! 野球が見られるぞおおお!!!!!

 と高揚しながらチケットに記載された席へとむかう。

 

 指定された席は、芝生の上に仕切られた1.5m四方のソーシャルディスタンスなスペース。あれ? 千利休が仙台まで伊達政宗に『侘び寂び』を伝えに来たのかな?とおもってしまうその茶室の小間のようなスペースに座ると、いつもと違う野球観戦に気づかされ、さっきまでの高まる気持ちがすこし落ち着いてくる。

 抹茶代わりにマザーポートコーヒーのアイスコーヒーをガブガブと喉に流し込む。そう、本日の仙台は夏日。6月なのに日差しがやけに厳しいのだ。

 

 芝生の前、ロンドンバスが鎮座している横に大型モニターが設置されていた。モニターのなかで、茂木が、内田が、浅村が、ブラッシュが打って走って投げている。

 ブラウン管の代わりに大型モニターか、ライブビューイングはさながら令和の街頭テレビだなー、なんて一人納得していたのだが、しかし今はコロナ禍での野球観戦。マスク着用、大声禁止、タオル回しの行為はご法度。当日はアルコール類も販売中止。力道山とフレッド・ブラッシーもビックリな状況で、観客はパラパラとした拍手と、心の中だけで熱く声援を送る“寸止め応援”で選手にエールを送っていた。

 ああ、これは応援欲との戦い、大人としての精神力が鍛えられるなあ、とホヤの唐揚げをマッタリ食べながらモニターをながめていると、ふとメリーゴーラウンドが視界にはいった。