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楽天・三木肇監督が上宮高校OBに送った金言は、売れない若手時代を思い出させてくれた

文春野球コラム ペナントレース2020

上宮高校OBが集まった三木監督就任祝賀会での出来事

 6月19日、待ちに待ったプロ野球が開幕する。

 おぼろげながら三木野球の片鱗がみえた開幕前の練習試合。相変わらず西武戦に強いステフェン・ロメロや、再起をかける涌井秀章も7イニングを無失点で抑えるなど新戦力の充実が感じ取れた。辰己涼介、山崎幹史、小郷裕哉など各選手たちの走塁意識も格段に上がっていた。

 三木肇監督は、昭和52年生まれの同い年にあたる。アンドリュー・ジョーンズ、ディディエ・ドログバ、安室奈美恵、Kiroro、そして僕、かみじょうたけし。みな三木世代である。同い年でプロ野球の一軍を率いる、正直どんな心臓しとんねん……。とツッコミをいれたい。自分ではちょっと考えられない。しかし、一度会えばこの人が作るチームを見たい、応援したいと思わせてくれる男である。

 今年1月某日。上宮高校野球部OB会の仕切りで、三木肇新監督就任祝賀会が大阪市内のホテルで行われた。大阪在住で楽天ファンという事もあってか、パーティーの司会を仰せつかった。

 円卓には、同校OBでもある楽天の苫篠誠治コーチ、光山英和コーチの姿もあった。上宮高校のレジェンド・山上烈元監督、現・近畿大学野球部監督で三木監督在学中の監督でもある田中秀昌氏の激励の言葉や、三木監督と同期入団でもある野村克則コーチの爆笑トークなどもあり、祝賀会は大いに盛り上がった。

 そして宴も後半、20近くある円卓の代表者から三木監督への質問コーナーが始まった。お酒も入っている事もあり、答えられないような質問や質問者がその場にいないなんて事もあった。しかし三木監督は1時間近く着席する事なく一人一人に真摯に答える。そんな中、一人の青年が質問した。

楽天・三木監督

三木監督が答えたプロ野球選手にとって大切な事とは?

「プロ野球選手を目指しています、プロ野球選手にとって大切な事はなんですか?」

 上宮高校を卒業し大学で野球を続けているのだと言う、ど真ん中直球勝負の質問だった。三木監督は、少し考えた後にゆっくりと口を開いた。

「よく、人と違う事をやらないといけないよという言葉を耳にしますが、もちろん大切な事かもしれません。しかし、人と同じ事が出来る力はもしかするとそれ以上に大切な事だったりします。がんばって下さいねっ」

 うわぁ……と、20数年前を思い出した。松竹芸能に入りたて、養成所でのネタ見せの日々……。

 誰一人売れていない、とにかく人と違う事だけを模索する集団(芸人たち)であった。手押し車をしたまま漫才するコンビ、家出コントで養成所から出て行ってそのまま帰ってこない人。もがくが故のお笑いイップス。もう何が面白いのかもわからない。

 ある時、養成所の先生から、ますだおかだの新人賞を獲った漫才を完全にコピーしてこいと言われた先輩がいた。いつも奇抜なネタで養成所では目立っていた方だった。どんな漫才になるのか楽しみだった。しかし結果は散々、全然おもしろくなかった。

 声の張り方、トーン、間、全てが違った。人と違う事ばかり探し求めて、誰もがしっかりと見つめていなかった基本、土台が全く出来ていなかったのだ。土台があってこそ成り立つ空気感こそが個性だ、と知った。

 どんなネタをやるかではなく誰がやるか。そのキャラクターを作る大切さを知った。