昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

4・14が終わる3分前……阪神・岩貞祐太がインスタ投稿に込めた「熊本」への思い

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/15

 今季初めて手にした白星にも頬は緩まない。「勝利投手」には似つかわしくない硬い表情のまま、阪神タイガース・岩貞祐太は、広島から約440キロ離れた故郷を思った。

「昨日からものすごい雨で……球磨川が氾濫しているニュースを見て、やっぱり心配が第一ですし、これ以上被害が大きくならないことを祈るしかないという風な気持ちです」

 7月4日、マツダスタジアムで行われた広島戦で今季3度目の先発マウンドに上がると、フォークを決め球に序盤から快調に飛ばし5回までスコアボードにゼロを並べた。6回に3点を奪われて降板したものの、チームの連敗を4で止める価値あるクオリティースタートは、自身の今季初勝利につながった。広島戦は試合前までキャリア1勝12敗と極端に相性が悪い上に、投げ合う相手は過去3戦全敗で2戦連続完投勝利中のエース・大瀬良大地。そんな2つの逆境をはね返す力投を素直に喜べなかったのは、6回に失点を重ねたことだけが理由ではなかった。

岩貞祐太

またしても地元・熊本を襲った天災

 その日の未明から熊本県南部を襲った豪雨。同県出身の左腕にとって、荒ぶる泥水に為すすべ無く飲み込まれていく町の様子を伝えるニュースは胸をしめつけた。同県に住んでいる弟、球磨郡にいる叔父、叔母の安否は確認できたものの、またしても地元を襲った天災に、試合後に三塁ベンチ前で行ったヒーローインタビュー中も口は重かった。「朝起きた時に家族内のLINEで(熊本が)大雨で大変だと言っていたので。ずっと心配してるんですけど、仕事は仕事で切り替えてやりました」。

 4年前がフラッシュバックする。あの日も、背番号17はマウンドに上がって、懸命に腕を振っていた。16年4月16日の中日戦で7回4安打無失点の快投。守護神のマルコス・マテオが打ち込まれて白星を逃したが、揺れる思いを覚悟に変えた。「携帯(電話)を触れる時は熊本にいる人に連絡を取って(状況を)確認していた。試合直前まで心配していて、正直(試合中も)集中できなかったけど、必死に守ってくれた守備陣、一生懸命リードしてくれた捕手がいる。全力でいかないと失礼にあたる」。今回の広島の時と同じく、試合後は熊本の“今”を案じる言葉が並んだ。

 その2日前、熊本地震が発生。実家から車で10分の距離にある益城町が甚大な被害を受けた。マウンドから勇気を……そんな気持ちになれたのは、もっと先の話だ。「1家族で1個のおにぎりを分け合っていると聞いて……」。登板後すぐに、不足している食料を大型スーパーで買い込むと救援物資として送り、現地にいる弟に配ってもらった。

©スポーツニッポン