企業が宣伝を紙の広告からネット広告に移行させていることもあり、コロナ禍前から新聞の折り込み広告は前年比95%程度の減少傾向にあったという。
「そこに今回のコロナ。地元では若い店主らの間に廃業を決めた人もいると聞く。もう若い店主に『頑張れ』とは言えない状況だ」(同前)
新聞社は自社系統の販売店「専売店」にこだわりが強いが、専売店の経営が立ち行かなくなれば、他系統の販売店に配達と集金を委託するしかない。所長は「おそらくコロナ禍の影響で、各地で新聞社の系統を超えた販売網の再編が進むのではないか」と予測する。
「うちのエリアでも、バタバタ閉店した」
別の地域の、他紙の系列店でも事情は変わらない。
「このひと月の間に、うちのエリアで他系統の販売店がバタバタと閉店した」と語るのは、関東地方の読売新聞系統の販売店所長だ。
新聞は“レガシーメディア”などと言われるようになり、新聞の定期購読者は減り続けている。この所長は「もともと弱っていたところへ、コロナがとどめを刺すのではないか」と戦々恐々としている。
自身の店も大打撃を受けた。店の売り上げのうち3分の1は折り込み広告手数料で、それまで月400万円前後あったのが、新型コロナウイルス禍で4月の折り込み広告は約130万円、5月は約120万円に激減した。
所長によれば、読売新聞社は4月から6月まで、新聞1部当たり月110~200円の補助金を緊急に支給したというが、「焼け石に水」の状況だ。
この店では読売新聞だけでなく日経新聞も扱っている。日本経済新聞社は他の一般紙と違って専売店志向がなく、自社系統の販売店は都心のごく一部にしか置かず、大半は他系統の販売店に配達と集金を委託している。所長は「日経新聞社はコロナ禍において補助金もなく、『残紙』も減らそうとしない」と怒り心頭だ
「残紙」とは読者に配達されることなく、販売店に残っている新聞のことだ。新聞社が販売店に対し、購読契約数を超える部数の新聞を買わせるため残紙が発生する。これは独占禁止法で禁止されている「押し紙」だが、新聞社と販売店の力関係では圧倒的に新聞社が強いため、この悪習は長年にわたり続いてきた。