豪華景品やサービス紙は、業界ルールの「新聞公正競争規約」に違反するが、ライバル紙の販売店同士が狭いエリアで読者を奪い合う状況になると、お互いに掟破りをするのが新聞販売業界の歴史だった。所長によれば、地元のエリアでは「1年間の購読契約をしたら3カ月は無料」といういわゆる「3S」が常態化しており、部数の割に販売店の利益が薄い。
それでも、これまでは購読料収入が少ないのを折り込み広告収入で補ってきたが、コロナ禍でそうもいかなくなった以上、読者にも業界のルール通りの購読料の支払いを求めようとライバル紙の販売店間で申し合わせる道筋が見えてきたという。
この所長は、次のように打ち明ける。
「販売店経営は確かに厳しい状況ではあるが、本社(新聞社)が押し紙をせず、なおかつ系統の違う販売店同士で販売正常化ができれば、あと5年ぐらいは何とか“新聞屋”を続けられるかなと思っている。借金を抱えたまま廃業し、一家で野垂れ死ぬわけにいかない」
新聞各社はどのように捉えているのか
この現状を新聞各社はどのように捉えているのか。
コロナ禍での販売店への経営支援について尋ねると、読売新聞グループ本社広報部は「経営支援の補助を行っていることに加え、家賃や備品リース代の支払いの減免・猶予、融資の支援などを実施している」とし、「本年5月、東京本社販売局に『折込推進課』を新設したほか、折り込み会社、ネット専業広告会社などと連携して、折り込みとインターネットを組み合わせた広告効果を広告主に提案している」と回答した。他社からは「取引先に関することであり、回答は控えさせていただきます」(朝日新聞社広報部)、「各販売店様との取引上に関することですのでお答えできません」(日経新聞社広報室)、「各販売店の実態を踏まえ、各種支援策などを実施していますが、詳細はお答えしておりません」(毎日新聞社社長室)との回答だった。
一方、販売店との取引内容を見直したケースについて、日経新聞社広報室は「新型コロナウイルスの感染拡大を機に販売店様との取引内容を見直したケースはありません。但し、社会情勢の変化などによる販売環境への影響については常に注視してまいります」とコメント。押し紙については「注文の通りに新聞を届けており、押し紙をしていません」(朝日新聞社広報部)、「『押し紙』はありません」(毎日新聞社社長室)、「『押し紙』と呼ばれる行為は一切ありません」(読売新聞グループ本社広報部)と答えた。