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被害者は2015年以降は再び増えている

 M資金の場合、被害に遭った経済人が名乗り出ることはほぼなく、その存在を信じた理由が明らかになることは稀だ。しかし時に大きく報じられ、詐欺として事件化することもある。それでも秘密資金の存在を信じる経済人は後を絶たず、2015年以降は再び増えている。 

 近年問題になることが多いのは、M資金の存在を信じ、その受け取りを了承する「確約書」に署名してしまうことだ。

<資金者殿 この資金をお受け致します。宜しくお願いします> 

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 A4判の社用紙にこう手書きされ、名刺のコピーが貼られ、その下に署名・住所・携帯電話の番号が記される。パスポートの顔写真と署名が記載されたページのコピーが添えられていることも多い。 

 この数年で確約書に署名したとされるのは、食品会社社長、旅行会社創業者、衣料品メーカーの常務など、いずれも上場企業の幹部。その数は実に20人を超えた。 

 中には、大手ゼネコンの副社長、地方銀行の専務、信金の専務と、確約書に署名した後に突然辞任する経済人も出ている。 

「お金を出したかは定かではありませんが、確約書にサインすると、しばらくしてそれがM資金ブローカーの間に出回る。ブローカーが次々と本人の携帯に電話をかけ、『こんなものにサインしていいのでしょうか?』と詰め寄る。その企業に出向くこともあり、逃げられなくなるのです」(同) 

©iStock.com

上場企業の会長が失踪

 17年末、売り上げ2兆円を超える東証1部上場企業の会長が、体調不良を理由に突然辞任した。 

 半年前から、この会長の名前で署名された確約書と、会長の顔写真が写ったパスポートのコピーがM資金ブローカーの間で出回りはじめた。ブローカーが入れ替わり立ち替わり会長の携帯に電話を掛け、自宅を訪れる者もいたという。 

「会長が電話に出なくなり、そして辞任。携帯電話も解約されました。しばらくして実家まで探しに行った人もいますが、帰っていなかった。失踪してしまったのです。確約書に署名したことを詰められただけではなく、もっと深い理由があるのでは、と……」(同) 

  2年半が過ぎた現在、親族に聞いたが「どこにいるか分からない」という。

 M資金ブローカーは、今も動いている。 

「紹介を通じたり、自宅を訪問したりして上場企業の社長に接触し、コロナ感染対策と称し、期間限定で7000億円を提供できると持ち掛けているグループがいます」(同)