ソウルの日本大使館前で28年間、毎週水曜日に続けられてきた慰安婦問題を日本政府へ抗議する「水曜集会」が、2週連続で別の場所に移ることを余儀なくされた。
元慰安婦の支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)の主催で1992年にスタートした同集会が場所を移して行われたのは、当然ながら初めてのことだ。
彼らが集会を開けなかったのは、元慰安婦への寄付金や募金の使途をめぐり疑惑が続出している正義連を批判し、慰安婦像の撤去を訴える保守系市民団体「自由連帯」が7月中旬まで毎週水曜日に慰安婦像前で「像撤去要求集会」をすることを警察に事前申告したため。正義連は集会場所を変えざるを得なくなったのだ。
しかし、その保守系団体も慰安婦像に近づけてはいない。学生団体「反安倍反日青年学生共同行動」が、慰安婦像を囲んで不法に座り込み、“反日の聖像”を2週続けて死守しているからだ。
日本大使館前には、そんな三つ巴の“無法地帯”のような光景が続いていた。
慰安婦像周辺で3団体が同時に集会を開く異常事態
7月1日水曜日正午前、日本大使館前に向かうと、集会は3カ所に分かれて行われた。慰安婦像を囲んで「反日」を自称する学生団体。そのすぐ隣で保守系団体の自由連帯。さらに、慰安婦像をはさんで自由連帯と反対側で、正義連のメンバーが集まった。
この3者の配置は、保守系団体の集会に反発する学生団体が慰安婦像を「死守する」と座り込みはじめた6月24日に続くものだ。この初日は雨が降る中、学生たち15人余りがレインコート姿ながらも、ずぶ濡れになって、互いに体をロープで数珠つなぎに縛り合い、慰安婦像を囲んだ。
雨で冷えたのか、青ざめた顔で体を震わせている女子学生もいた。保守系団体が慰安婦像の撤去を強く訴えるすぐ横で、学生らはトイレにも行かず、1時間半以上、無表情で座り続けた。
学生たちが座り込む周囲は警察官が取り囲んでいた。女子学生が多いせいか、女性警察官も多い。
「みなさんは申告もせずに歩道を占拠しています。不法行為であるため、退去するように。従わなければ、法的に対処します」
警察は拡声器で、定期的に学生団体のメンバーに警告はするものの、それ以上の取り締まりに動くことはなく、座り込みは事実上黙認されていた。