反対派の社員は退職
新型コロナの感染拡大で、リモート面接を含め、オンライン化は至るところで進んでいる。オンライン=悪ではないが、生身のサービス、しかも自分では声をあげられない可能性がある子供の命を預かる領域で、社員が一度も会っていないシッターを紹介していいのか。
キッズライン黎明期のことを知る元従業員Fさんは、選考プロセスのオンライン化について「最初のころは1人1人時間をかけて面接していたのに、なぜこうなってしまったのか」と嘆息した。
「地方在住のサポーターの面談は、2016年頃からオンライン化が進められています。2016年1月25日に大阪、名古屋、福岡で登録会を行うため、プレスリリースを出していますが、集客が思わしくなく、実際には2月に入りオンライン登録会に変更する旨のメールが参加者に送られました。一部社員はシッターの質を担保できないと反対しましたが、社長は毎回出張費などのコストがかかると語り、オンライン面談をすることに決まりました」
社内事情を知る関係者Gさんからも同様の証言が寄せられている。
「その後も様々なプロセスがオンライン化していきました。もちろんオンライン化に反対する社員もいたと思いますが、違和感があっても声をあげづらい社風なんです」
2020年に入ってからは、主要メンバーだった役員や一部の管理職も含め10人近くが退職。30人程度のアルバイトがオペレーションを支えているとはいうが、社員はいまや20人程度とみられる。
「心身を病み、急に体調不良を理由に会社に来なくなり辞めていく社員や、当初は会社の理念に共感して入ったけれど、企業体質に失望して退職する社員も多いと思います」(元社内関係者Hさん)
経沢社長は、2016年に上梓した著書「すべての女は、自由である」(ダイヤモンド社)で、トレンダーズが上場した後の反省をもとに、数字ばかりにとらわれずに顧客のためのサービスを提供したいといった内容を綴っている。
一方で「2020年6月前後に上場することをめざし、準備をしていた」といった複数の証言もある。社内向けに、上場したら社員にストックオプションを検討している旨の話もあったという。
その2020年に向け、社内の体制が崩れていったにもかかわらず、少人数による運営でペースを抑えるどころか、キッズラインはシッター採用を加速させていくのだ――。
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