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閉園から20年…廃墟遊園地「化女沼レジャーランド」が辿った“数奇な運命”の全貌

あの日“廃墟マニアの聖地”で起きた奇跡

2020/07/11

 それなりに切羽詰った状況が背景にあると想像できたが、どう考えても無茶な話だ。不動産業とは無縁のサラリーマンに、温泉が付いた4万5000坪の土地など売れるはずがない。しかし、後藤さんには並々ならない御恩があった。後藤さんは、遊具がボロボロになっている姿は残念だけど、それを見て楽しんでくれる人がいるのならそれも嬉しいと言い、廃墟マニアである私をあたたかく歓迎してくれたのだ。

 そんな後藤さんに何か恩返しがしたいと、私も前々から思っていた。廃墟を売るのはあまりに荷が重いが、廃墟マニアなりに本気でやれることはないかと考えてみた。そして、ひとまず「廃墟遊園地の所有者に頼まれて、廃墟マニアが購入者を探している」とSNSで発信すると、これが瞬く間に拡散された。

お金を入れると動く、飛行機の遊具。なんと本物の飛行機(実機)とのこと

企業や地方自治体から問い合わせが殺到!

 翌日にはテレビ局や新聞社から問い合わせが殺到し、私は対応に追われた。テレビで放送されると、それを見た人たちからの問い合わせも相次いだ。化女沼レジャーランドの知名度は上がり、いつしか“廃墟マニアの聖地”とまで呼ばれるようになった。

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 土地に興味を持った不動産会社など10社から問い合わせも入り、地方自治体からは東京オリンピックの選手村にできないか、という相談も寄せられた。関心の高い企業とは、直接会って話をすることもあった。

チェーンタワー。チェーンとリフト部が無くなっている
後藤孝幸さん

「廃墟を見学したい」との声

 全国紙に私個人の携帯番号が掲載されたこともあって、非常に多くの電話がかかってきた。特に多かったのは、廃墟を見学させてほしいという、個人の方からの要望だった。通常であればお断りするのだが、見てみたいという気持ちは痛いほど分かる。それに、廃墟の売却やそれに伴う電話対応も、あくまでも趣味として行っている。ならば同じく趣味の範疇で、そうした声にも応えようと思った。