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WEBデザインの制作現場に疑問を感じています

WEBデザインの制作現場に疑問を感じています

小宮山雄飛の「お悩み食堂」 #14

2017/09/07
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<お悩み>ファストファッションのようなWEBデザインの制作現場に疑問を感じています

 WEB制作会社で働くデザイナーです。もともと美大でグラフィックを勉強の後、今の会社に入りました。今の会社を選んだ理由は、会社紹介に載っていた制作事例のデザインがどれも素晴らしく、業界内でも有名だったため履歴書を送ったところ、晴れて採用となりました。

 希望通り制作の部署に配置されたのはいいのですが、その現場は私が描いていたクリエイティブな世界とは全く異なり、とにかく案件の数をこなしてナンボの世界。

 上司の口癖は「これ、巻きでよろしく!(=早くよろしく)」。なんでもかんでも「巻きで」と言われ、時間をかけた物作りや、ディテイルへのこだわりは許されません。

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 これがビジネスのデザイン現場と言われればそれまでかもしれませんが、しっかり時間をかけた仕事の良さだって絶対あるはず、ファストファッションのようなWEBデザインの制作現場に疑問を感じています。

 こんな私は商業デザインには向いてないんでしょうか?

(25歳・女性・WEB制作会社デザイナー)

(小宮山雄飛の回答)

 音楽業界でも「巻きで」という言葉はよく使います。どちらかと言えば僕自身も巻きで仕事をしてくれる人の方が、だらだらと作業の長い人より好きです。

 以前、レコーディングが巻きで終わった日に、スタッフと渋谷の「高麗亭」という焼肉屋さんに行きました。飛び込みで入ったはいいが、このお店なぜかメニューがない。どう注文すればいいか困ってるうちに、テーブルにはキムチや唐辛子味噌など惣菜がガンガン並べられてくる。

 なるほど、韓国スタイルのお店なのかと納得していたら女将さんがやってきて、

「まずはタン塩にしますか?」

 言われるがままタン塩をお願いすると、肉厚のいかにも美味しそうなタンが登場、これを女将さん自ら焼いてくれる。

 そろそろ焼けたかなと、食べようとしたところ

「あ、それ巻いて!」

 え??

「私がやってあげますから」

 と、女将さんがタンと味噌やキムチ・韓国海苔など惣菜一式をサンチュでくるっと巻いて、

「はい、あーんして」

 と、なんと口まで運んでくれる!

 実に至れり尽くせりのサービスで、言われるがままに、あ~ん。

 うまい!!

 タン塩と言えばレモン汁につけて食べるのが一般的ですが、こんな美味しい食べ方があったんですね!

「次は塩ロースにしますか?」

 またも言われるがままに注文。これまた、焼いてくれたロースを食べようとすると、

「あ、それも巻いて!巻いて!」

 当然のように「巻き」の指示。一口食べて、

 うまい!

 
 お肉をサンチュで巻いて食べるのって、こんなに美味しいんですね。調子付いてミノも注文。

 程よく焼けた辺りで、今度は言われる前にと自分でサンチュに巻こうとしたら

「あ、それは巻かないで!」

 えーー!!

 なんと、ここでまさかの「巻かないで」の指示。言われてみれば、独特の食感のあるミノは色々なものと一緒に巻くより、単体で食べた方が歯ごたえなど、より楽しめる。実に見事な使い分けです。

 このように焼肉も仕事も、巻く方が良いときと、巻かない方が良いときがあるのではないでしょうか。

 スピード勝負の「巻き」の仕事と、じっくり時間をかけた「巻かない」仕事、両方できてこそプロというもの、ぜひ本物のプロを目指してください!

野菜をたっぷり入れるのが「高麗亭」流
 ちなみに、巻いて食べると美味しい料理といえば、新宿「ベトナミング」のライスペーパーで巻く海老のすり身つみれ、同じく新宿「随園別館」の薄餅で卵焼きを巻く合菜戴帽なども有名ですので、「巻き」の仕事に慣れるために一度訪れてみてはいかがでしょう。

高麗亭
渋谷区渋谷2-14-13 B1F
03-3406-7310
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13013023/

べトナミング
新宿区新宿2-10-7 TOMビル 1F
03-6457-8098
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13173976/

随園別館 新宿店
新宿区新宿2-7-4
03-3351-3511
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130402/13000844/

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