家を手放すかどうかの瀬戸際に
中山さんは、愛着のある家を手放すかどうかの瀬戸際にいるという。
「今後、カラオケ店の営業もどうなるかわかりません。思いきって退職しました。今は求職中ですが、同種のアミューズメント産業や飲食店などはコロナの影響もあって先行きが不透明と考え、以前とはまったく違う職種を希望しています。ローンの支払いは交渉中なので待ってもらっていますが、あと1~2カ月のうちに転職できないと、支払いが滞り、家を手放すことになってしまいかねません。もし家を売ったとしてもローンは残るでしょう。自分自身どうなるかまだわからない状況です」
5月、6月の仕事がなくなったカメラマン
35歳でカメラマンとして活躍する隅田公仁彦さん(仮名)は、今年1月に家を買ったばかりだった。
「僕は2年前に結婚して、昨年4月に子供が生まれました。仕事はスタジオ所属のカメラマンをやっていて順調だったんですけど、いろいろな事情が重なって2019年の3月に独立しました。
その頃は妻と子供と、成増にある家賃11万円の賃貸マンションに住んでいたんですけど、ちょっと手狭になってきましたし、子供のために環境がいいところに腰を据えて生活を築きたいと思って、家の購入を検討しはじめました。
資産価値的にマンションも考えましたけど、僕も妻も一軒家で生まれ育ったので、やっぱり落ち着ける一軒家がいいねってことで、予算4000万でいろいろ見てまわり、都心に出やすいベッドタウンにちょうどいい新築の建売物件をみつけました。初期費用なんかもいれると4200万。JAの審査に通って35年ローンが組めたので、月の支払い額は15万円ほど。僕の収入が平均して月30万くらいでしたし、妻も産休が終わったら働くのでこれなら大丈夫だろうと思いました。僕の仕事柄、収入は安定しないですけど、月15万だったら最悪コンビニバイトでもなんでもすれば稼げるかなという算段もありました。家は今年の1月に完成して、すぐに引っ越しました」
念願のマイホームを手に入れ、さあこれからという時にコロナ禍がやってきた。
「新居での生活が始まってから数カ月でコロナの影響が出て、僕の仕事がまったくなくなりました。5月、6月はほとんど仕事をしていません。ただ、危機感はそれほどなかったんです。この仕事はギャラの振り込みが遅いんですよ。だいたい仕事をしてから2~3カ月後、下手すると半年後とかだったりする。なので、現状ではローンを支払えています。ただ、数カ月後にはゼロになることは目に見えていますから、バイト探しも考えています」
隅田さんは、仕事ゼロを経験しても、家を買ったことへの後悔はないという。
「後悔はしていません。売るつもりもないし、バイトしてでもローンを払って、家族3人で生活費をおさえてなんとか暮らせればいいんじゃないでしょうか」