日本国内で唯一、新型コロナウイルス「感染者ゼロ」を維持していた岩手県で、7月29日、2人の陽性が確認された。岩手県の達増拓也知事は午後8時からの記者会見で、「お見舞いを申し上げたいと思います。そして今まで岩手県内、陽性になる方がゼロだったということですけれども、岩手県も決して例外ではないのだと。新型コロナウイルス感染症というのは、誰でも感染する可能性があるということで、県民の皆さんも自分も感染する可能性があるんだと、改めてそういう思いで、感染した方には共感を持っていただきたいですし、また、自分自身も感染対策をしっかりやっていただきたいと思います」と述べた。

 岩手に住む父親に「そろそろ帰っていいかな」と聞いたところ、「絶対に帰るな」「岩手1号はニュースだけではすまない」との返信があったというツイートも話題を呼んだ。首都圏を中心に感染者数が再び増えるなかで、帰省や旅行についてはどう考えるべきか。達増知事のロングインタビューを再公開する。(初出:2020/7/21)

岩手県の達増拓也知事 ©︎共同通信社

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「第1号になっても県はその人を責めません」

――7月5日、達増知事は「7.2 新しい別の窓」(Abema)に出演されましたが、「新しい地図」の3人は岩手県のコロナ対策にどんな関心を持っているように感じましたか?

達増 なぜ岩手県では感染者ゼロのままであるのか、それゆえのプレッシャーをどう乗り越えようとしているのか。私が記者会見で「(陽性)第1号になっても県はその人を責めません」と話したことも話題にのぼりました。

 感染者ゼロには、色々な要因があると思っていまして、岩手は1都3県、東京、神奈川、千葉、埼玉を合わせた面積より広く、人口密度が低い。県民性が真面目で慎重だということ。岩手県は日本の中でも外国との行き来が比較的少ないほうだという要因もあると思います。また、世界各国と比べると日本全体の感染者数はまだ少なく、もし岩手がアメリカやヨーロッパにあったとしたら、ゼロということはないだろうと考えています。

「新しい地図」の3人 ©︎文藝春秋

――一時、PCR検査数が少ないから感染者ゼロなのではないか、「ゼロは怪しい」という声もありました。東北5県の感染者数と検査実施数を見てみると、青森(31人/1201件)、宮城(126人/4914件)、秋田(16人/1018件)、山形(75人/2772件)、福島(84人/8232件)と、検査数は意外と岩手より少ないところもあるんですね(各7月16日~17日時点)。

達増 岩手の累積検査実施数も1224件(7月16日時点)と、1000を超えました。最近では全国最下位ではなくなってきています。県で行うPCR検査は4台の機械で1日に80検体行うことができ、県職員OBなどを臨時に採用して、マンパワーも増やしています。途中から民間検査も行うようになり、今ではそちらのほうが多くなりました。6月19日からはあらたに抗原検査も実施しています。

 岩手県はドライブスルー型や臨時の施設でPCR検査を受けられる「地域外来・検査センター」の数が、東北で一番多いんですよ。県が広いので盛岡から離れたところのニーズに応えられるようにしています。5カ所が開設済みで、これから計10カ所、医師会と連携してやっていきます。