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「姓を変えたらナメられる」「“普通”の結婚でよくない?」名字を変えたくない女性がぶつかった壁

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世間からの見え方が重視される「結婚」

 最後に、結婚というものが今の社会でどのように機能しているか考えてみたいと思います。

 法律上の結婚をした2人は、様々な法的な保証を得ることができます。税制面の優遇、遺産相続での優遇、子どもを産み育てる場合は共同親権など、その機能は多岐にわたります。共に人生を歩む2人にとっては、その“誓い”でもあります。

 しかし、そうした2人の関係性や法律上の優遇面だけでなく「周りからどう見られるか」という要素も結婚の捉え方には大きく影響しています。例としては「所帯を持つと信頼されやすい」などがありますよね。

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 漫画の中にもあるように、家制度や「夫は妻を従えるべき」という価値観の残る社会では、「親族への面目が立たない」「妻の尻に敷かれているなんて頼りない、と思われる」などの不安が生まれやすく、さらには婚約者から「周りから生意気な女だと思われるから」と言われてしまう女性もいます。

 このような“世の中の普通”や“周りからの評価”が残り続けていたら、たとえ夫婦別姓が選べるようになったとしても、プレッシャーを感じ名字を変えざるを得ない状況は解消されないかもしれません。

 同性パートナーシップ制度が導入された地域でも、周りからの偏見や差別を懸念して申請することができないと感じる同性カップルが多くいるように、制度だけ改善されればそれだけで万事うまくいくというわけではないのです。

 現在、選択的夫婦別姓が実現していない日本では、この名字の選択を巡って合意に至れず破局を余儀無くされるカップルも多くいます。今回の漫画のトラブルも、もし夫婦別姓を選べる社会ならここまで深刻化しなかったかもしれません。

 だからこそまずは、制度を改善し、より多くの選択肢を確保すること。しかしそれと同時に、今の風潮や人々の中に刷り込まれた“普通”という価値観について再考し、アップデートしていくことも重要なのではないでしょうか。

“当たり前”や“普通”という言葉の陰で、誰かが強いられている苦痛、無用な不安やトラブルを見えないままにしておくのは、もうやめにしたいと強く思います。

(漫画:keika、編集後記:伊藤まり

 パレットークでは、「こうあるべき」を、超えてゆく。をテーマに、LGBTQ+、フェミニズム、多様性について、漫画やインタビューを通して発信している。

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