昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

子どもへの性加害は「平均週2~3回」小児性犯罪者のすさまじい実態――2020上半期BEST5

大森榎本クリニック・斉藤章佳(あきよし)さんインタビュー

 あまり知られていないのですが、男の子が被害に遭うことも多いです。というのも、男の子は女の子よりも保護者に「気をつけなさい」と言われることが少なくて、警戒心が薄い。さらに、幼稚園の年長や小学校低学年くらいの男の子は、遊びの中で性器を比べたりするような子たちが多いので、加害者からしてみれば、ズボンを脱がせて写真を撮ったり、というようなことを騒がれずにできる。

――警戒されない、騒がれない子どもを狙って接触している側面もあるのですね。

斉藤 そうなんです。本当は女の子を狙いたいのだけれども、女の子のほうがリスクが高いので、仕方なく男の子を狙っていた、と話していた人もいます。

ペドフィリアは先天的か、後天的か

――そもそも、子どもへの性的欲求を持つペドフィリアは、先天的なものですか、それとも後天的なものですか。

斉藤 結論はまだ出ていません。ドイツではペドフィリアの治療が進んでいて、治療プログラムが国内に10か所以上あるのですが、そういった場所で得られたデータによると、ペドフィリアには大きく2タイプあります。13歳以下の子どものみを欲求の対象とする“真正タイプ”のペドフィリアと、成人に対しても欲求を持つ“混合タイプ”のペドフィリアで、数を見ると後者のほうが圧倒的に多い。

 後者の混合タイプについては、ペドフィリアは学習された行動、つまりなんらかの形で性的嗜好を後天的に持つに至った、という説が支持されています。前者の真正タイプについては、遺伝的な要因があるのではないか、という論文もありますが、まだ仮説段階です。

「児童ポルノに出会ったことで嗜好が芽生えてしまった」という話も度々当事者から聞きますし、私個人としては、ペドフィリアは社会の中で学習されると捉える社会モデルを支持しています。

治療の最優先事項は「絶対再犯をしないこと」

――この点については、ペドフィリアの治療プログラムではどのように向き合っているのでしょう。

斉藤 嗜好が先天的であれ、後天的であれ、まず加害行為を絶対に繰り返してはいけない、というのが大前提です。加害行為が繰り返されてしまえば、被害者がまた生まれてしまうわけですから。

 ペドフィリアの治療は「行動変容」と「認知のゆがみ」へのアプローチが重要です。この辺りは、エビデンスが確立している認知行動療法を中心に治療していきます。小児性犯罪の場合、絶対に再犯があってはなりませんから、認知行動療法の中でも「まずは問題行動を止める」ということに着目した治療に取り組んでいきます。

 そこで鍵となるのが、再犯防止計画(リスクマネジメントプラン)です。

――再犯防止計画とは、何でしょう。

斉藤 多くの小児性犯罪者が子どもへの性加害を繰り返してきましたが、繰り返される行動は往々にして「パターン化」しています。その再犯のサイクルを洗い出し、何が引き金になって子どもに加害行為をしてしまうのかを明確化していきます。

 ある人にとっては、子どもがたくさんいる、下校時刻の通学路に居合わせてしまうことが引き金かもしれない。ある人にとっては、睡眠不足や身近な人からの叱責といったことからくるストレスが、引き金になるかもしれない。そういったことを明確化してもらって、具体的な対処法を見つけていきます。