顔も名前も公開している彼らが悪質な対応を続ける理由
「ああいうの、今は悪い噂がすぐネットで広まるのになんでなくならないんだろう」と疑問を口にする私に、あるヒントをくれたのは気心の知れた友人でした。
「いやな対応されたとき、タクシー会社に問い合わせしたことある?」
私が「ないかも」と小声で返すと、友人は「だからじゃないかな」と言ったあと、こう続けました。「もちろん100%相手に落ち度があるけど、じゃあ自分は何もしないでいても状況がよくなるかっていうのは別の話だからね」
確かに知っている中では私も他の友人たちも、理不尽な扱いを受けてしまったあと、タクシー会社に連絡をした人は一人もいません。理不尽な態度を取る人が自らそれを反省するのを期待しても、望みは薄い。誰かが指摘してはじめて、彼らの認識が変わるのかもしれません。
考えてみると、例えば「#KuToo」や「検察庁法改正案への抗議」も、もしも誰も行動を起こさなければ、大勢の人が抗議に対して賛同の声を上げなければ、今ごろどうなっていただろう。おそらく、いろいろな問題が顕在化されることもなかっただろうし、大きなムーブメントになっても尚なかなか物事が進展しない様子をみるに、差別が自然になくなることはありえないのでしょう。
ドライバーは顔も名前も車内に掲示しているにもかかわらず、それでも彼らが堂々と女性客を馬鹿にした態度を取ることができるのは、こんなことでクレームが入ることはないとたかをくくっているから。そう考えると非常に納得がいきました。
でも、もしタクシー会社に報告したことで恨みを買ってしまったら。私たちが乗車した場所、降車した場所をドライバーが覚えていて、報復を受ける可能性があったら。
そうした不安を拭いきれずに「何か手はないものか」と調べを進めていくと、国や各自治体が運営するいくつかの相談窓口にたどり着くことができました。
団体や権威に頼ることも有効な手段
たとえば消費生活センターに電話相談すれば、専門家があらゆる問題を円滑に解決するために処理をしてくれます。もちろん個人情報を相手側に漏らすことはないし、個人の特定につながる話をしないよう配慮がなされています。
なかでも「性に基づく差別的な扱いや、男女共同参画の推進を阻害する人権の侵害(職場などでのセクシュアル・ハラスメントなど)といった、当事者間での解決が難しい困りごと」の対応に特化した機関も各都道府県に存在しているため、こうした団体を頼ることもひとつの手かもしれません。
・人権侵害の被害者救済のための施設一覧(http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/jyuuten_houshin/sidai/pdf/jyu06-5.pdf)
※13ページ目の「資料5-2-3」参照
また意外にも効果が高そうだったのは「タクシーセンター」への連絡。タクシーセンターとは、タクシーの適正な運用のために設立された公益財団法人のこと。車内にある車番と運転手名が書かれたハガキを備忘用に持ち出し、あとで問い合わせをすれば、センターからタクシー会社、運転手に、かなり強烈な指導が入ります。いわば監査の役割を果たす機関であるため、この制度を利用するといいかもしれません。