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げそ太郎氏から見れば「健康オタク」だった志村

志村けん ©︎文藝春秋

 時には女性を口説く技も伝授されたという。

「志村さんから階段をのぼる時の上手なコケ方のレクチャーを受けました。これは志村さんが若い頃にアパートの2階に住んでいて、好きな女の子に見てほしくて、志村さんが全部の階段をつまずいて転んで見せたら、女の子が大笑いしたという話を僕にしてくれました。僕も同じように階段をコケてみせたんですけど、女の子に『何しているの?』と聞かれ、見事にスベリました」

 志村と言えば、毎晩のガールズバー巡りと1日タバコ3箱の不摂生が代名詞でもあったが、げそ太郎氏は「健康オタク」だったと証言する。

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「豪快にお酒を飲んでタバコを吸うという印象があると思いますが、志村さんはお酒を美味しく飲むために健康にはすごく気を遣っていました。肝臓の数値がよくなかったりして、主治医の先生に朝はイワシを食べるようにと言われると、毎朝イワシを食べ続けていました。先生に少しお酒を控えなさいと言われると約束をしっかり守って本当に控えるんです。きな粉豆乳が身体にいいとわかると毎日飲んだり、人に勧めたりもしていました」

いまでも後悔している「写真」のこと

 01年、げそ太郎氏は「このままでは志村さんをずっと頼ってしまう」と、弟子からの卒業を決断し、志村から「がんばって来いよ」と背中を押され、約7年間の弟子生活を終えた。げそ太郎氏はダチョウ倶楽部がいる太田プロに所属することが決まり(16年に退社)、その後も志村は特番や舞台がある度にげそ太郎氏に声を掛け、弟子の成長を見守ってきた。げそ太郎氏が最後に志村と会ったのは昨年7月だったという。

現在、故郷の鹿児島でレポーターとして活動するげそ太郎氏。「かごニュー」(鹿児島テレビ)より

「志村さんの元を離れて11年に鹿児島へ戻り、昨年、客席で志村さんの舞台を観たんです。観劇後に楽屋へ挨拶に行ったら、志村さんが『おっ、来たか』って僕に初めて微笑んでくれたんです……。今までは『おう』くらいで笑顔なんてなかったのに、うれしかったです。事務所の方に『2人でお写真でもどうですか』と言っていただいたんですけど、志村さんはシャイで写真が苦手だということを知っていたので、僕は遠慮しました。結局、それが最後になってしまい、今は写真を撮らなかったことを後悔しています。

東村山の献花台 ©︎文藝春秋

 僕は志村さんみたいになりたくて、26年前に志村さんの元へ行きました。『ありがとうございました』というのは終わりみたいで嫌なんですけど、志村さんの技術は引き継げなくても、志村さんの仕事に対する思いだったり、お客さんに対する思いは僕にも引き継げると思うんです。これからは教えていただいたことを大事にして“志村けんの弟子はいいよ”と思われるようにしたいです。どれだけできるかはわからないですけど、がんばってみますという気持ちです。志村さんに恥をかかせるわけにはいきません」

 笑ってそう話したげそ太郎氏の左右の目からは、大粒の涙がこぼれていた。

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