PCRセンターを40か所も作った
その怒りは、コロナ対策の原動力ともなった。PCR検査が目詰まりしていることに気付くと、自治体と協力してPCRセンターを40か所も作った。ホテルで宿泊療養する感染者の管理を担ったのも医師会だった。
「やれることは何でもやるんだ」
そのためには、政府への苦言も辞さない。
政府の「Go To トラベル」キャンペーンをもじって、飲食を控える「Not go toキャンペーン」と皮肉った投稿を、Facebookにアップした。
「緊急事態宣言の解除後、政府が唯一やったことがあるとすれば、7月16日に『Go To トラベル』のキャンペーンで、東京を外したことくらい。しかも、その過程でおかしなことがあったのに、ほとんど気付かれていない」
「先生の机叩き、久々に見ましたよ」
感染対策のためには、身内ともいえる病院にも手厳しい。
7月7日、都立・公社病院のトップふたりを都医師会の会長室に招いて話した。コロナ感染者を受け入れている病院は数十施設に分散されている。だが、急増する感染者の入院先を調整する保健所も大変だし、救急搬送する救急隊も大変だ。500床とか1000床規模の専門病院があれば、感染者以外の患者も、安心して地元の病院にかかることができる。受診抑制は解消されるなど、すべての問題が解決する。それをやれるとしたら都立・公社病院だろうと尾崎は思った。
煮え切らないトップ2人の対応に、尾崎は怒りが込み上げてきた。
隣で一緒に話をしていた医師会の副会長に、後で言われた。
「先生の机叩き、久々に見ましたよ」
そんな尾崎は、テレビには引っ張りだこだ。記者会見の様子もSNSなどで拡散されていく。その圧倒的な存在感は、医師だけでなく看護師などの医療従事者や都民にも支持され、いつの間にかコロナから都民を守る象徴的な存在になっている。
数々のエピソードをもとにした「尾崎節」は、「安倍政権『無為無策』が日本を壊す」と題して「文藝春秋」9月号及び「文藝春秋digital」に掲載されている。(敬称略)
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