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「5月になると元山にある『新興市場』という大きなチャンマダン(農民市場)が突然閉鎖されて、20日以上商売ができなくなりました。元山には『六〇二別荘』という金正恩の別荘がありますが、誰が来たかはわかりません。ただ、“誰か”が元山に来たのは確かです。人民班長(町内会長)と保安員が夜、各家を回って(世帯員以外に)外地の人が来ていないか、宿泊検閲をして、警備が異常に厳しかったですから」

コロナ患者の家は「立入禁止」に

 他の都市と比べて恵まれた生活環境にあるといわれる首都・平壌にあっても、コロナ禍は猛威を振るっているという。51歳男性のカン・ソングク氏は次のように語る。

「保健省の筋によると、平壌の感染者は300人程度で、死者は5人だそうだ。公式にはゼロだと言ってきたが、上部(党幹部)はコロナだと知っていた。ただ、平壌も病院の施設などが不備だから、患者を受け入れるわけにもいかないし……」

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 コロナによる死者は中朝国境でより多く発生しているようだ。農業をしながらチャンマダンで商売をしているチョン・セミ氏(37歳・女性)はこう語る。

「はじめは(コロナではなく)『肺炎が出回っている』と言われました。コロナに感染して、ウチの町では15人くらいが亡くなったようです。昔は病院が無料でしたが、今は自分で薬を買って病院に行かなければなりません。お金があれば病院へ行けるのに……。コロナにかかった家は、『立入禁止』の紙が貼られ、出入りが制限されています」

出典:「文藝春秋」9月号

 筆者が「文藝春秋」9月号及び「文藝春秋 電子版」に寄稿した「北朝鮮市民に直通電話『金正恩のコロナ』と『愛の不時着』」では、上記の3人を含めた北朝鮮住民8人のインタビュー内容を詳報した。コロナ禍における生活の様子に加えて、最近存在感を高めている金正恩の妹、金与正・党第一副部長の評価や、北朝鮮市民の間でも大人気の韓流ドラマ「愛の不時着」の感想などについても聞いた。いま、北朝鮮の人々が何を思い、どのように暮らしているのか、ぜひ一読して欲しい。

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文藝春秋

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北朝鮮市民に直通電話「金正恩のコロナ」と「愛の不時着」