コロナ禍によってテレワークが主体の生活を余儀なくされた家庭は多い。コロナについては緊急事態宣言こそ解除されたものの、その後も再び増加傾向が強まり、会社の中には引き続きテレワークを継続する、あるいはコロナ禍の状況とは関係なく、このワーキングスタイルを積極的に継続していこうという企業も多数現れている。人々の新しい働き方は着実に社会に根を張りつつある。
だが、日本の住宅の多くはこれまで「働く」という要素を住宅内では全く考えてこなかったのが現実だ。こうした時代の流れは今後の住宅の在り方にどのような影響を与えるのだろうか。
コロナ禍において、テレワークを余儀なくされた多くの家庭で話題になったのが、仕事場所を家の中のどこに確保するのかという大命題だった。マンションなどの商品企画は、ファミリータイプではだいたい3LDKが主体だ。3つの部屋は夫婦の寝室と2人の子供部屋で占拠され、書斎などもとからあるわけがない。
夫婦揃ってテレワークなど「想定外」
そんな窮屈な間取りの中に「働く」ためのスペースを確保するのは一苦労だ。専有面積がせいぜい70平方メートルから広くても80平方メートル程度の住戸内に、大きなデスクや長時間座っていても疲れないチェアを置くスペースはほとんどないというのが実情。
夫婦ともテレワークの家庭では、オンライン上で会議を行ったり、電話でのやりとりを行う場合に、同じダイニングテーブルでやっていると互いの声が重なり合い、夫婦喧嘩に発展したケースも後を絶たない。そもそも夫婦で一緒に仕事をしたことがないのに、同じ住戸内で互いが気を使いあいながら仕事をするなどという事態は、おそらく両者にとっての「想定外」。気が散るし、いらいらするのもよくわかる。
ペットなどが居たら事態はさらに悪化する。いつもいないはずの御主人様がいる毎日にペットははしゃぎまくる。学校に行けない子供は退屈してまとわりつく。コロナ禍での在宅勤務、テレワークは多くの家庭にとっては、あまりに「整備されていない住宅」に悩まされたところも多いはずだ。
マンション共用部にコワーキングスペースを
おそらく今後の新築マンションでは、各住戸に書斎スペースを設けるなどの新しい間取りが生まれるはずだ。たとえば3LDKプラス書斎として、夫婦2人用の個室仕様の部屋やスペースの確保などが考えられる。トイレや浴室のように個室にして、さらに防音環境などが整えられればベストだが、狭い専有面積の中から捻出するのは至難の業。せいぜいコーナーを作るか、折り畳みのデスクなどを設ける程度になりそうだ。
臨時的な措置でテレワークをやるのならば、仮設程度のスペースでもよいが、本格的なものになると住戸内ではなかなか満足できるものにはなりそうもない。そこで考えられるのがマンション内共用部にテレワークスペースを確保することだ。マンション共用部にあらかじめコワーキングスペースや個室ブースを設けて、住民に貸し出すという企画だ。