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「テレワークと言われても書斎がない…」コロナ後のマンションは“新しい日常”に対応できるか?

戸建て住宅の在り方も激変する!

2020/08/25
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 たとえばタワーマンションなどの高層建築物になると、地下深くまで杭を打ち込んでいる。そのため建物の地下には広大なスペースが生まれるが、地下ということもあってあまり利用されていないのが実態だ。このスペースをテレワーク用のフロアとして住民に提供することが考えられる。地下は光が入らないという難点があるが、逆に集中しやすい環境を作ることは可能だ。

 最近では液晶画面にあたかも外の風景が本物のように映し出されるパネルなども開発されている。私も実際に見学したことがあるが、窓から見えるのは快晴のアルプス。まるで窓の外には心地よい風が吹いているかのような錯覚まで起こさせるほどの優れものだった。

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容積率を余らせているタワマンは多い

 タワマンの場合は2014年の7月に実施された建築基準法の改正で容積率を余らせている物件が多いはずだ。この改正というのは、建物を建設する際の規制となる容積率(敷地面積に対して建設することができる建物の面積の割合)に手心が加えられたものだ。

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 これまで容積率の対象となる建物の床面積には、エレベーターのシャフトの空間部分、つまりエレベーターのカゴおよびカゴを囲むシャフト部分の面積がカウントされてきた。エレベーターにはいろいろな大きさがあるが、「東芝製乗用エレベーター15名定員」の昇降路は縦2.15m、横2.15m。面積にして4.62平方メートル(約1.4坪)ある。

 一見すると大した面積には見えないかもしれないが、通常のタワマンになるとエレベーターは階層別に15台以上設置されている。もちろんすべてが最上層階までつながっているわけではないが、その面積は建物延床面積のおおむね2%程度に相当する。つまり、たとえば床面積2万坪のタワマンであれば、本来はエレベーターのスペースなのに「床」とみなされてきた400坪が、容積としてカウントしなくてよいということになったのだ。その余剰分を利用して、新たに建物を増築してコワーキングスペースとして貸し出せば、管理組合としても収入増になるわけだ。

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マンション暮らしの「新しい日常」

 ポスト・コロナ時代では、マンション住民の多くが朝、三々五々エレベーターに乗ってマンション共用部にあるコワーキング施設に出勤。そこで決められた時間、執務することになるだろう。テレワークスペースの予約は管理組合にスマホで行い、組合からは予約された個室の鍵の暗証番号が送られる。またはスマートロックにして、スマホをかざして扉を開錠して中に入る。そんな風景がどのマンションでも共用部での日常となることだろう。

 今多くのマンション管理組合では、ライフスタイルの変化の影響で、駐車場収入が減少している。テレワークスペースの貸し出しは組合にとって新たな収益源になるはずだ。すでに分譲されているマンションでも、共用部に陳列されてこれまでほとんど使いもされずに放置されていた高級なソファや家具を取り除いて、コワーキングスペースに改装するマンションが出てきそうだ。