この場合は、たとえばユニットバスのようにパネルを組み合わせて2畳から4畳程度の書斎を設け、このユニットを共用部に並べてみてはどうだろうか。各ユニットは防音のみならず、各種カメラを備え付けて会社と結ぶ、あるいは中で働く人の集中力を維持・向上させる空調システムや、体調・健康管理のための器具などを備え付け、集中して仕事ができる環境を提供するなどの工夫もこらせるはずだ。
戸建て住宅の在り方も激変する
戸建て住宅でも同様に「働く」というコンセプトが取り入れられるようになり、住宅内に寝室とは別にワーキングスペースが整えられるようになるだろう。戸建て住宅はマンションよりもスペースに余裕が持てるものも多いので、「働く」ための快適な装備はより充実したものにすることも可能だ。
またこれまでの住空間は、平日は「寝る」ための空間でしかなく、その象徴が「夫婦は同じ部屋で寝る」というコンセプトだった。ポスト・コロナ時代においては夫婦がそれぞれの部屋を持ち、個室で仕事をする。リビングやダイニングがオフィスでいうところの共用部になり、夫婦や子供たちが寛ぐ場になるという明確な区切りがなされるだろう。
このように住宅が「働く」空間としても意識されるようになれば、住宅の間取りや共用部の考え方にも大きな変革が起こる。1日のあいだの大半をすごすことになると、従来の家の在り方は激変するのである。
日本の“画一的な住宅づくり”はもう終わる
「働く」だけではない。家の中での過ごし方にも変化がでてくるかもしれない。つまり、自宅で寛ぐコンセプトとして自分の趣味のスペースを充実させたいというニーズも顕在化するだろう。1日のあいだで通勤という無駄な時間が無くなる分、それを趣味の時間や寛ぐ時間に充当できるからだ。
自宅で食事する機会が増えればキッチンの仕様をよくしたい、バーコーナーを作って好きなワインやウイスキーをストックしたいといった要望も出てくる。住宅はよりオーダーメードなものに変わってくると思われる。これまでのような供給者側が勝手に描くコンセプトの押し付けでは通用しない時代になるのだ。
こうしたライフスタイルの変化は日本の住宅をより品質の良いものへと変えていくきっかけになりそうだ。コロナ禍は国民生活に甚大な影響を与えているが、他方で日本の画一的な住宅づくりに革命を引き起こす可能性があるのだ。