明日のことや先のことは考えない 川﨑宗則の流儀
時を経て昨年、川﨑は台湾の味全ドラゴンズで選手兼コーチとして再びユニフォームを着た。そして今年は無所属の状態が続いていたが、川﨑宗則“選手”のプレーがついに日本では3年ぶりに見られることになりそうだ。
独立リーグのルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスが8月28日、選手契約で合意したと発表した。背番号はやはり「52」だ。期間は9月1日からで、9月7日に小山市内で入団会見を行うことになっている。
じつは今年の7月初旬、久しぶりに彼に会ってインタビューをした。住宅案内のフリーペーパーに掲載するための取材で福岡の街の暮らしや魅力が主なテーマだったが、野球に関する質問にも明るく応えてくれた。
所属チームが決まらない中だったが、プレーへの準備は欠かしていなかった。
「ずっと外で走ってますね。走って、走って、走りまくって(笑)。で、(野球の)練習もしてますよ」
表情や顔の輪郭、体のラインを見れば明らかだった。現役続行への想いを問うても、もちろん意欲も満々だった。
「そうですね。体が動くし、まだ野球をやりたい。でも、わかんないよ、こればかりは。明日になって辞めたいと思うかもしれないし(笑)。まぁ、明日やりたいと思えばやろうかな。そういうスタンスでやってますね。いつまで続けたいっていうのもないし、いつ辞めたいというのもない状況です」
独特のムネリン節も健在だ。
また、このところは夜ランがマイブームらしく、長男を引き連れて自宅周辺を走っていると言っていた。そこに近所の子どもたちも参加するようになり「さながら宗則陸上教室ですよ」と笑っていた。
「ちゃんとハードルを使ってトレーニングをしたり、ウォーミングアップも入念に。タイムが上がった子もいて近所では評判良いみたいですよ(笑)。子どもたちが月に1回僕宛に手紙を書いてくれる。『ムネリンありがとう』って。それが宝物。今はホント、子どもが可愛い。子どもって宝ですね」
川﨑が入団した栃木ゴールデンブレーブスは現在、ルートインBCリーグを戦っている真っ最中だ。東地区グループAでかなり快調で、すでに10月開催の地区チャンピオンシップ進出を決めている。
そして、西岡剛のチーム復帰も決定した。2006年の第1回WBCで世界一に輝いたときの侍ジャパン二遊間コンビの復活だ。
野球を楽しもう。
「Have fun!」「ハッピーホルモン!」
昨年、台湾へ彼に会いに行ったとき、現地の若い選手たちにもそんな心構えを一生懸命伝えていた。栃木にとっても、BCリーグにとっても、日本の野球界にとっても、宝物のような男が再び帰ってきたのだ。
明日のことや先のことは考えないのが川﨑宗則の流儀だ。このチームでいつ迄、どんなプレーをしたいのかを問いかけたところで、彼の答えは決まっているだろう。
いつか会うことが出来ても、野暮なことを聞くつもりはない。ただとにかく、やり切ってくれればいい。それが許される数少ない野球選手だ。今まで頑張ってきた自分へのご褒美なのだから、思うままに前に進んでいってほしい。
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