昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/09/06

明日のことや先のことは考えない 川﨑宗則の流儀

 時を経て昨年、川﨑は台湾の味全ドラゴンズで選手兼コーチとして再びユニフォームを着た。そして今年は無所属の状態が続いていたが、川﨑宗則“選手”のプレーがついに日本では3年ぶりに見られることになりそうだ。

 独立リーグのルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスが8月28日、選手契約で合意したと発表した。背番号はやはり「52」だ。期間は9月1日からで、9月7日に小山市内で入団会見を行うことになっている。

 じつは今年の7月初旬、久しぶりに彼に会ってインタビューをした。住宅案内のフリーペーパーに掲載するための取材で福岡の街の暮らしや魅力が主なテーマだったが、野球に関する質問にも明るく応えてくれた。

 所属チームが決まらない中だったが、プレーへの準備は欠かしていなかった。

「ずっと外で走ってますね。走って、走って、走りまくって(笑)。で、(野球の)練習もしてますよ」

 表情や顔の輪郭、体のラインを見れば明らかだった。現役続行への想いを問うても、もちろん意欲も満々だった。

「そうですね。体が動くし、まだ野球をやりたい。でも、わかんないよ、こればかりは。明日になって辞めたいと思うかもしれないし(笑)。まぁ、明日やりたいと思えばやろうかな。そういうスタンスでやってますね。いつまで続けたいっていうのもないし、いつ辞めたいというのもない状況です」

 独特のムネリン節も健在だ。

 また、このところは夜ランがマイブームらしく、長男を引き連れて自宅周辺を走っていると言っていた。そこに近所の子どもたちも参加するようになり「さながら宗則陸上教室ですよ」と笑っていた。

「ちゃんとハードルを使ってトレーニングをしたり、ウォーミングアップも入念に。タイムが上がった子もいて近所では評判良いみたいですよ(笑)。子どもたちが月に1回僕宛に手紙を書いてくれる。『ムネリンありがとう』って。それが宝物。今はホント、子どもが可愛い。子どもって宝ですね」

©文藝春秋

 川﨑が入団した栃木ゴールデンブレーブスは現在、ルートインBCリーグを戦っている真っ最中だ。東地区グループAでかなり快調で、すでに10月開催の地区チャンピオンシップ進出を決めている。

 そして、西岡剛のチーム復帰も決定した。2006年の第1回WBCで世界一に輝いたときの侍ジャパン二遊間コンビの復活だ。

 野球を楽しもう。

「Have fun!」「ハッピーホルモン!」

 昨年、台湾へ彼に会いに行ったとき、現地の若い選手たちにもそんな心構えを一生懸命伝えていた。栃木にとっても、BCリーグにとっても、日本の野球界にとっても、宝物のような男が再び帰ってきたのだ。

 明日のことや先のことは考えないのが川﨑宗則の流儀だ。このチームでいつ迄、どんなプレーをしたいのかを問いかけたところで、彼の答えは決まっているだろう。

 いつか会うことが出来ても、野暮なことを聞くつもりはない。ただとにかく、やり切ってくれればいい。それが許される数少ない野球選手だ。今まで頑張ってきた自分へのご褒美なのだから、思うままに前に進んでいってほしい。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/39855 でHITボタンを押してください。

この記事の写真(2枚)

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー