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まさかの電撃トレード、澤村拓一の復活を確信する二つの理由

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/09/09

投手本位で考える吉井コーチの存在

 澤村が復活すると確信するもう一つの理由はロッテの吉井理人コーチの存在だ。吉井コーチがメッツに移籍した時、投手コーチのボブ・アポダカから言われたという言葉がある。

「俺はおまえのことは何も分からない。おまえのことを一番知っているのはおまえ自身なのだから、おまえのほうからコーチの俺に教えてくれ」

 お前はこういうタイプだ、という風に型にはめたり、選手の短所を矯正したりすることばかりを考えるのではなく、まずは特徴を生かす。怒るのは無気力な態度を見せたときだけで、試合中の失敗に対して、怒鳴ったり、叱ったりするのは論外。あくまで投手本位で考える吉井コーチの指導哲学が出来上がるきっかけになった言葉だという。

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 やれコントロールが悪い、ピッチングIQが低い、筋トレし過ぎじゃないか……。失敗や欠点ばかりをあげつらわれて、本来の実力が発揮できなくなる。それとともに、徐々に周囲の信頼を失い、常にがけっぷちの状態に追い込まれる。そんな澤村の現状を考えると吉井コーチの存在はきっとプラスになる気がしてならない。

 30歳で野村監督に出会い、第二の全盛期を迎えた吉井コーチはこうも語っている。「ピッチャーが本当の意味で力を発揮できるのは30代になってからだ。酸いも甘いも噛み分けて、そして性格的にも角が取れてきて、ピッチングの面白さに気づく」。酸いも甘いも噛み分けることや、性格が角ばっていることに関しては澤村の右に出るものはそうはいない。まるで澤村の再ブレイクを予言しているかのようにも思えてくる。

 今後もきっと浮き沈みはある。だが、どんな紆余曲折があっても、この移籍は澤村にとって、いい方向に進むだろう。このまま巨人でくすぶっていれば、その素質は腐るだけだったかもしれない。澤村に、脇役は似合わない。この男は、王道を歩ませたとき、とてつもない力を爆発させるタイプに違いない。

 きっと澤村の全盛期はこれからだ。

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