「第2の曺国(チョ・グク)事態」と呼ばれるスキャンダルが文在寅大統領に襲いかかり、いま政権支持率は急降下している。
今年1月に就任した秋美愛(チュ・ミエ)法務長官が、兵役中の息子に特別待遇を受けさせた疑惑を持たれ、世論から大きな批判に晒されているのだ。今や、娘の不正入学疑惑などで辞任に追い込まれた曺国(チョ・グク)前法務長官をめぐるスキャンダルを彷彿とさせる事態に発展している。
疑惑が持たれたのは、2017年6月、兵役中だった秋長官の息子が右ひざの手術を理由に2度の延長を含む計23日間の病気休暇を取得した際の手続きだ。その過程で、当時与党「共に民主党」代表だった秋氏が部隊に対して圧力を行使したとされる。
この疑惑は、秋長官の就任前から出回っていた。2019年12月、週刊紙「日曜新聞」は秋氏の息子と同じ軍隊に所属していた当直兵士A氏の証言を紹介し、「秋氏が部隊に電話をかけて休暇延長を要請し、上級部隊から休暇延長命令が当直兵士とその上司に通達された」と報じた。当時すでに法務長官候補者として国会聴聞会に出席した秋氏は、この報道に「私が部隊に連絡したことはない」と強く反論していた。
「息子が家で泣いている」と国民に訴える
徴兵制のある韓国では、政治家が自分や息子の兵役免除などの不正が発覚すれば、政治生命まで脅かされるほどの弱点になる。
野党はこの問題を検察に告発したが、今年1月、秋氏は晴れて検察を管轄する法務長官に上り詰めた。秋氏は国会に息子をめぐる関連疑惑が繰り返し提起されると「(濡れ衣を着せられた)息子が家で泣いている」と国民に感情的に訴え、「(野党は)小説を書いている」と野党議員を面前で嘲弄するなど、一貫して疑惑を全面否認。捜査は一向に進まなかった。
この疑惑が再び注目を集めるのは、この8月に陸軍将軍出身の「国民の力」(元未来統合党)の申源湜(シン・ウォンシク)議員が、関係者から「秋氏の補佐官が部隊に電話をかけ、秋氏の息子の病気休暇処理を要請した」という証言を得たと公表してからだ。
秋氏の主張と真っ向から対立する現場からの証言に、「現役の法務長官が国会で嘘をつき続けてきた」との批判が国民にも広がった。
その後の取材で、病気休暇に必要な書類などの資料が一切残っておらず、本来は必要な休暇療養の審議が省かれていた事実が判明。さらに、秋氏の息子の部隊での配置や、平昌(ピョンチャン)冬季五輪に通訳員として派遣された際の選抜過程でも秋氏からの要請があったという疑惑も浮上。疑惑が次々に発覚して“タマネギ男”の異名を取った曺国・前法務長官と同じ展開となった。