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「なんだろう、これ?豆、かな?」 “ヨコハマトリエンナーレ2020”で、分身を使って美術鑑賞

「なんだろう、これ?豆、かな?」 “ヨコハマトリエンナーレ2020”で、分身を使って美術鑑賞

アート・ジャーナル

2020/09/26
note

「美術館にいるみたいな気分!」

 60分ほどで、ひと通り会場を観て回ることができた。

 羽田ゆりのさんに感触を尋ねてみると、

「心から楽しめました。妹の手を引きながら一緒に展覧会を観て回ったような気持ちでしたね」

 では古川結莉奈さんはどうか。鑑賞会、どうだった?

「美術館にいるみたいな気分だった! 楽しくて途中で歌ったりもした!」

 と、たいへんうれしそう。結莉奈さんの母親に様子はどうだったか聞いてみると、

「ずっと大盛り上がりでしたよ。身体の動くところをパタパタさせて、踊ったりもしてました。

 このところずっと外出できずにいて、正直わたしも含めて、気持ちが塞ぎ込んでしまうときもあった。でも今日は娘のこんな楽しそうな様子を見られて、ふたり揃ってリフレッシュできました」

OriHimeを抱える羽田ゆりのさん

 じつは結莉奈さんは、まだ実際の美術館へ行ったことがない。

 状況が落ち着いたら、美術館へのお出かけにも挑戦してみたいね。親子はそう約束を交わした。

 結莉奈さんの母親がこう言葉を継いでくれた。

「OriHimeと一緒にもっとあちらこちらへ行けて、いろんなものに触れるチャンスが増えたらうれしいですね。私たち家族や、同じような環境にいる人たちが、何か新しいことにチャレンジするきっかけになってくれそうです」

 分身ロボットOriHimeの力たるや絶大だ。そしてまた、アートとアートに触れられる場の存在も、やっぱり大切だと改めて感じさせる。

 不要不急? とんでもない。アートが存在し続け、いつだってそれに触れられる環境があることは、どんな状況にあってもしかと守られるべきもの。結莉奈さんの姿を見ながら、そう意を強くした。

INFORMATION

イヴァナ・フランケ《予期せぬ共鳴》2020年 ©Ivana Franke

 

ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW−光の破片をつかまえる」

2020年7月17日〜2020年10月11日

横浜美術館、プロット48

 

「なんだろう、これ?豆、かな?」 “ヨコハマトリエンナーレ2020”で、分身を使って美術鑑賞

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