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ワンオクを教えてくれた上田剛史、由規を思い出させてくれた歳内宏明――スワローズ選手と登場曲の物語

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/05
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村上宗隆、突如の“長渕”、長谷川宙輝が三浦春馬の楽曲に込める意味

 ちょっとビックリしたのは9月6日の中日戦で、20歳の4番・村上宗隆が2度目の打席に向かった時のこと。登場曲として流れてきたのは、長渕剛の『SAMURAI』だったのだ。覚えているファンも少なくないと思うが、これは2016年までヤクルトでプレーしていた左のスラッガー松井淳氏が、出囃子として使っていた曲である。

 懐かしさが込み上げてきて松井氏に連絡を取ってみると、思いは同じだったようだ。「自分もSNSで知りました。懐かしかったです」との返信があった。もっとも村上が『SAMURAI』を使ったのは、この日を含め2試合だけ。現在、偶数打席の登場曲は福山雅治の『虹』に取って代わられている。

 9月17日のDeNA戦では、救援左腕の長谷川宙輝が9回に登板する際、いつもの欅坂46の『NO WAR in the future』とは違う曲が流れてきた。耳慣れない曲に音楽検索アプリを立ち上げると、スマホの画面に映し出されたのは『Fight for your heart 三浦春馬』の文字……。彼なりの追悼の意味が込められているのだろう。今年7月に急逝した三浦さんのデビューシングルだったこの曲は、球団の公式HPによれば長谷川が奇数イニングで登板する場合に、登場曲として使われるという。

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『バラ色の日々』を再び聴きたくて

 さて、最後になってしまったが、イエモンである。ここまで書いてくれば、ヤクルトファンの方ならもう察しがついているだろう。筆者がイエモンを聴くようになったのは、そう、ドラフト2位で2018年に入団した投手の大下佑馬がきっかけである。

 彼がルーキーイヤーの途中から使っている出囃子がTHE YELLOW MONKEYの『バラ色の日々』。「追いかけてぇも、追いかけぇてもぉぉ」とボーカルのロビンこと吉井和哉がギター1本で、切々と歌い出すところからして惹きつけられるのだが、そのパートが終わってドラムが切り込むと、そこからバンドサウンド全開。特にエマこと菊地英昭のギターリフが印象的で、頭から離れない。

 前述のとおり、筆者はかつて完全な「洋楽かぶれ」だったため、1999年にシングルとして発売されたこの曲も、大下の出囃子として流れるまでは、恥ずかしながら聴いたことがなかった。ところが歌詞の素晴らしさも相まって、今さらながら聴けば聴くほど好きになるというか、本当にクセになる。なんならあのリフが1日中、頭の中でループしていることすらある。

 残念なことに大下は8月下旬から2軍に落ちたままで、神宮ではもう1カ月以上もこの曲を聴けずにいる。その間はスマホで何度も聴いた。おそらくはこの1カ月、筆者のスマホで最も再生されたのはこの『バラ色の日々』だったはずだ。

 だから、再び神宮のスピーカーからこの曲が流れる日が、本当に待ち遠しい。イニング途中での登板だと、尺の関係で冒頭の部分が省略され、いきなりドラムから始まることもあるため、大下にはできればイニング頭から投げてほしい。

 そのためにも1日も早く1軍に戻ってきてもらいたいところだが、大下のイースタン・リーグでの成績は、ここまで7試合に登板して防御率6.43。それでも昨日、10月4日のDeNA戦では2番手で登板すると、いきなり味方の失策で走者を背負いながらも、後続を断って無失点に抑えた。頑張れ大下!! 

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