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それは、我々が望んでいるようなインチキではなかった

 ところで、冒頭の「おどるポンポコリン」で「石原インチキおじさん」を思い浮かべてしまう私は、その後に続けてこのような歌詞で替え歌を口ずさむことがある。

 「いつだって 忘れない ジョンソンは イシが好き そんなの常識~♪」

 というのも、石原は外国人投手の信頼を多く集め、とりわけここ数年はK.ジョンソンの専属捕手のようになっていた。ジョンソンはお立ち台に上がるたびに石原のリードをベタ褒めする。昨年5月25日、日本球界通算50勝を挙げたジョンソンは「この50勝は石原の50勝でもある」とヒーローインタビューで語った。その言葉の通り、全てのジョンソンの勝利時(昨シーズン更に7勝を挙げたので、通算57勝)には石原がマスクを被っていたのである(2016年8月2日のヤクルト戦、バレンティンの振り抜いたバットが石原の頭部を直撃し、途中で會澤に交代したケースはあったものの)。

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 ところが今シーズン、オープン戦の段階からジョンソンの球を受けるのは會澤になった。この変更にどのような意図があるのか、真意はわからない。ただ、「今年41歳になる石原の引退が、もしかして近いのかも知れない……」といううっすらした予感を覚えたのである。開幕以降、石原の起用が大幅に減ったことで「インチキ」を見る機会もなく、7月15日には石原は2軍に降格した。そしてジョンソンは負け続けた。

 8月20日、遂に今シーズン初めてジョンソン-石原のバッテリーが実現したが、それでもやはりジョンソンは勝てなかった。そして1週間後の8月27日、再びスタメン出場した石原は、ゴロを打って一塁に走った際にもんどり打って倒れ、そのまま担架で運ばれた。それは、我々が望んでいるようなインチキではなかった。

 10月12日、ついに試合に復帰することが叶わないまま、石原の引退が発表された。どうにも割り切れない思いは残る。せめて万全の状態でシーズンを終えてくれていたならば、引退セレモニーをするにしても、満員の球場で送り出してあげられれば……。しかしそれは本人が一番悔しいところなのかも知れない。今後、カープのインチキの系譜は(特に捕手に)受け継がれていくのだろうか。ひとまずは11月7日、阪神戦の試合後に予定されている引退セレモニーで石原がどのようなインチキを見せてくれるのか、期待して待ちたいと思う。

こんな引退セレモニーだったらどうしよう② ©オギリマサホ

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