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2020/11/01

前代未聞の引退セレモニーを演出してくれた五十嵐さんへ恩返しを

 2019年9月22日、豪雨の神宮球場。この日僕のセレモニーをやることは一応決まっていましたが、後の日程や、天候などの兼ね合いもあり、実はギリギリまでセレモニーを決行するか否かは決まっていなかったんです。

 でも奇跡は起きました。試合は決行も、7回途中雨天コールド。グラウンドにはブルーシートが「必然的」に敷かれました。セレモニーが始まると、ますます強まる雨に皆、早く帰りたいのか、挨拶が終わるや花束贈呈をされることに。でも僕はなぜか(ここで花束受け取ったらおもんないな……)と思ったんです。その瞬間「行ってきます」という言葉が口をついて出て、足は一塁に向かっていました。

 一塁、牽制バック、二塁に盗塁と、雨中ベースランニングの「型」をこなし、三塁を蹴って、ホームのブルーシートに頭から飛び込みました(実は、ヘッドスライディングは試合で一度もやったことなかったのは内緒の話です)。そこにはチームメイトと家族が待っていました。あとから聞いたことですが、その輪にいた吉田大成は爆笑していたそうです。本人曰く「人生で一番笑った瞬間だった」と。全身ずぶ濡れのパパの姿を見て、僕の娘がひいている表情がツボにハマったと嬉しそうに言うんです。

 胴上げされたあと、グラウンドを一周。再びホームにヘッドスライディングで戻ると、なぜか2度目の胴上げが。

「もう一回やろう! もう一回!」とそのとき、胴上げの音頭を取ってくれたのが五十嵐さんだったんです。(2度も胴上げされる選手なんでいないんじゃないか)、と歓喜の涙で顔を濡らしていると、ぼやけた視界の真横でバッチリ目が合う男が。「ザッキスン」こと、山崎晃大朗でした。「あれ? 俺180cmの大男たちに上に放られてるのに目が合うはずがない……」よく見たらザッキスンも僕の横で胴上げされていたんです。

 その瞬間、妙に感動したのを覚えています。「打ち合わせナシで、こんなに胴上げを面白くしてくれるなんて……」。“主犯”は僕が「性格難世代」と呼んでいる4コ下の川端慎吾、そして荒木でした。後から「あれで良かったんですかね?」と聞かれたけれど、全然OK。お天道さまが用意してくれた最高の舞台で、フルスイングしないのは、プロとして恥ずかしいですからね。

 そして今度は、前代未聞の「引退セレモニーで2度&2人同時の胴上げ」を演出してくれた五十嵐さんへ恩返しをする番です。

 僕の入団1年目と、僕の現役最後の年しか、一緒のユニフォームを着る機会のなかった五十嵐さんですが、19年にスワローズに帰ってきたとき「三輪、お前ベテランになったな」と声を掛けてもらい、とても嬉しかったのを覚えています。僕がプロになる前からスターだったあの五十嵐亮太に。投手と野手なのでそんなに多く会話を交わしたことはありませんでしたが、今回、広報として、動画を撮るにあたって、一番話したのかもしれません。

 五十嵐さんの引退セレモニーが終わったあと、ベンチに戻ってくる本人をつかまえて、マイクを差し出しだすと、僕の肩をたたいてこう言いました。

「お前のよりイケてただろ?」

 気迫の投球、ファンに拍手を求めチームにエールを送ってくれたスピーチ、ライトスタンドのフェンスを駆け登る姿も最高にかっこよく、「今もビンビンに元気です」の発言はイケてました。そんな姿を動画に残せて僕は光栄です。

 五十嵐さん、23年間本当におつかれさまでした!

(この模様は東京ヤクルトスワローズ公式モバイルサイトでご覧になれます。五十嵐さんの勇姿と僕のマイクさばきをどうぞご堪能ください)

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