新聞記者に課せられた今後の課題とは
私は記者が首相や政治家に一切接触するなとまでは思わないが、その行為がどう見られているか、どう目に映るのか、いちいち考えるのも新聞記者の今後の課題だと思う。あえて言うなら重要なパフォーマンス。
そうでなくても、つい先日まで政権に対して厳しそうなことを言
さて権力側が「取り込みを図る」のは別の表現で言うなら「忖度をさせる、空気を読ませる」ということだろう。
菅首相が日本学術会議の新会員について候補者6人を任命しなかった件。そこに手を突っ込んでくるのかという驚きだが、実はこれを予言しているような記事があった。
『「値下げおじさん」は大衆に優しい? 消費増税に言及、弱者切り捨ての恐れ 菅義偉官房長官』(東京新聞WEB9月11日)
これは自民党総裁選の期間中の記事。東京工業大の中島岳志教授(政治学)は菅氏についてこう述べている。
《安倍政権下で成立した特定秘密保護法やテロ等準備罪(共謀罪)を使えば、政府批判や行動監視を強めることもできるといい、「これまで官僚に使われていた忖度の手法は今後、国民の側に向けられる可能性がある」と指摘する。》
今まで「忖度」という言葉は官僚だけのものだった。しかしこれからは国民の側も政府に忖度する事態になるのでは……という可能性を指摘していたのだ。
一般国民にまで広がる可能性を感じる「忖度」の輪
今回の日本学術会議の件を思い出してほしい。
《任命されなかった6人の経歴をみると、法学者や歴史学者がほとんどだ。特定秘密保護法や安全保障関連法の制定や共謀罪の新設に反対した人が含まれている。》([社説]なぜ学者6人を外したのか 日本経済新聞10月3日)
ここでも出てきた特定秘密保護法や共謀罪というキーワード……。
これらに反対した学者が任命されなかったと各所で言われているが、依然として菅首相は任命しなかった理由を説明していない。つまり、
《(任命拒否の理由として)思い当たる節はないか? そう考えさせることで、そんたくさせる仕組みになっている。研究業績に秀でた人を推薦する日本学術会議法の趣旨に反した人事だ》(岡田正則・早稲田大教授 毎日新聞10月2日)
恐ろしい。
忖度させるシステムは官僚から学者に広がってきた。どんどん一般国民にまで近づいていないだろうか。