「山尾はダメ」に鋭い指摘をした日刊スポーツ「政界地獄耳」
さて、ここから巻き返すには党役員人事だ。しかし……。
「民進 混乱の中発進 役員人事決定」(毎日新聞 9月6日)
「前原民進 混乱の船出」(東京新聞 同)
多くの新聞に「混乱」の文字が躍る。その理由は「山尾幹事長を断念」。
《民進党の前原誠司代表は五日、重要な初仕事の執行部人事で、内定していた山尾志桜里氏の幹事長起用を一転して断念する失態を演じた。》(東京)
はっきりと「失態」と書かれてしまった。そして、
「民進幹事長断念その理由は? 山尾議員も不倫か」(スポーツニッポン 9月6日)
時系列で整理すると、山尾氏の幹事長就任に反対する理由には二段階あった。最初は「当選2回の山尾氏では経験不足との声」があったから。そして「本当の理由は山尾氏に不倫疑惑が浮上したため」。
さて、この「山尾はダメ」について鋭い指摘を連発していたのは日刊スポーツのコラムだ。
《「経験」でいうならば、首相経験者の野田佳彦を幹事長に据えても「気に入らない」と協力しない政党だ。山尾は経験不足だからダメ、首相まで経験した野田もダメ。一体この党の議員は、誰が幹事長なら満足なのだろうか。》(「政界地獄耳」9月6日)
そして翌日。
《山尾が幹事長候補になれば、「経験不足」「選挙実務が足りない」と批判し、スキャンダル報道が出れば今度は「もう解党だ」「もう終わりだ」と嘆く。この党の文化とは何なのだろうか。》(同 9月7日)
前原誠司の「オール・フォー・オール」という皮肉
不倫騒動を通して見えてきたのは、山尾問題よりはるかに興味深い党の体質だった。
《他力頼みで、風や波に乗り当選。その時は自分のおかげで逆風が吹けば「もうだめだ」と自分以外の誰かのせいに。民進党の組織政党としての覚悟もプライドもないありさまにはうんざりする。》(同 9月7日)
この体質、自民党のニヤニヤが見える。
ここであらためて振り返ると、蓮舫氏の代表辞任から山尾氏の人事までキーワードは「幹事長」である。
野田佳彦氏の幹事長辞任のあと、蓮舫氏は後任を見つけることができなかったので代表辞任を決断した。そして今回は山尾氏の幹事長就任をめぐって揉めた。鬼門なのである。では「幹事長」とは何か。
「団体などのとりまとめをする役(の人)。特に、政党で、実務上の責任を負う役職。」(三省堂 大辞林)
つまり、党をまとめる役割の人がまとめられないという事態が続いているのだ。統治できず、むしろトラブルの震源地。
民進党は国民と共に歩んでいる気配がないどころか、党内でも共に進んでいないことを証明しているのだ。
「政党名には自分たちが実現できない理想が込められている」は、もはやジョークではなかったのである。
そう考えると、前原代表が掲げた「オール・フォー・オール(みんながみんなのために)」という代表選の公約は、確かに強烈な願いであった。