掛布雅之という人はどうしていつもこういう運命を辿るのか

 今週の文春野球コラムでは鳥谷敬の2000安打について書こうと思っていたのだが、その後によもやのビッグニュースが飛び込んできたため、やむをえずネタ替えをすることにした。阪神・掛布雅之二軍監督の退任発表である。

 これにはまず、激しい落胆と悲嘆が襲ってきた。きっと私だけではなく、多くの阪神ファンがそうだろう。1970年代~80年代にかけて一世を風靡したミスタータイガース。その絶大な人気と背番号31のカリスマ性は今も健在で、さらに二軍監督としての若手育成についても少しずつではあるが、着実に成果を上げつつあった。だから、表面的には今季限りで(たった二年で)退任する理由が見つからず、ネット上には阪神ファンの惜しむ声や悲しむ声、さらには球団に対する怒りや疑念などがあふれかえった。

 球団が発表した人事について、ここまで極端にファンからの反発が飛び交うのは、阪神ならではといったところだろう。阪神という球団は、これまでにも幾度となく傍から見たら不可解な決断を下してきた。とりわけ掛布雅之という人物は球団史に残る屈指の大スターでありながら、その処遇についてはなんとなく釈然としない後味の悪さが常につきまとっていた。ミスタータイガースは、どうしていつもこういう運命を辿るのか。

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掛布二軍監督と金本監督 ©時事通信社

球団社長の会見で感じたキナ臭さ

 去る9月10日、阪神・四藤慶一郎球団社長が会見を開き、掛布二軍監督の主な退任理由について「全体としての若手の底上げができた」「今後のファームについての将来的な展開を考えていくなかで、世代交代を考えていく必要がある」などと説明した。
これも私としては不可解だった。若手の底上げができたと本気で思っているなら、いくらなんでも早計すぎる。確かに、阪神の若手は以前に比べると成長しているが、高いレベルで見るとまだまだ育成途上だ。そもそも若手の底上げという積年の重要課題をたった二年で完了できるわけがない。掛布二軍監督ご自身も、やり残したことが多々あるだろう。

 また、世代交代というのも解せない。球団の中長期的な展望として次代の指導者育成も念頭に置いているなら、なぜ一昨年オフに掛布二軍監督を誕生させたのか。次代の指導者育成のためなら、指導者経験が豊富なベテランにひとまず二軍監督を任せ、そこからバトンを受け渡すのが通例だが、ご存知のように当時の掛布二軍監督は正式な指導者としては初就任だった。退任理由のひとつとしては、つじつまがあっていないように思う。

 とはいえ、阪神がこういう奥歯に物が挟まったような公式発表をするとき、そこにはいつも必ず裏事情があった。だから、今回もキナ臭さを感じずにはいられない。