掛布二軍監督の退任は金本監督の要望を球団が受け入れた結果?
そんなことを考えていたら、やっぱり複数のマスコミが「掛布二軍監督退任の真相」と銘打った記事を次々に発表した。それらによると、金本知憲一軍監督と掛布二軍監督の育成方針のちがいが大きいという。選手をスパルタ式に鍛えたい金本監督に対して、選手の自主性を重んじる掛布二軍監督。両者にはドラフト下位から大打者に成り上がったという共通点こそあるものの、指導方針は対照的で、並び立つことができなかったようだ。
さて、ここからは報道が真実だと仮定して書くが、要するに掛布二軍監督の退任は金本監督の要望を受け入れた結果ということになる。阪神は金本監督を選択したのだ。
果たして、こうなったら私の脳裏を巡るのは金本監督についてである。
思えば一昨年オフに金本監督が就任したとき、主要なコーチ人事も彼主導で行い、ドラフト指名についても彼の要望を通したとされる。そして、なにより掛布二軍監督の誕生を希望したのも、他ならぬ金本監督ご自身だったという。つまり、金本監督は掛布二軍監督を自ら要望し、その退任も自ら要望したということになるわけだ。
いくら金本監督が阪神にとって大功労者のOB(外様ではあるものの)とはいえ、監督としての実績はないため、チーム編成などにここまで大きな影響力をもち、しかも掛布雅之という生え抜きの大スターに関してまで口を挟めるのは異例中の異例だろう。かつての阪神では2002年に就任した星野仙一監督がいわゆる全権監督に近かったとされるが、当時の彼には中日監督としての実績があった。金本監督とはわけがちがう。
金本監督はここまで大きな責任を一人で背負いこんで大丈夫なのか?
そんなことを考えていると、私は今後の金本監督に不安と危うさを感じてしまう。
監督がこれだけの要望を球団に通すわけだから、当然それ相応の責任は生じてくる。少なくとも、チーム成績と若手育成の両面で“早期の結果”が求められるだろう。実際、これで来年の結果が芳しくなかったら、内外からの金本監督批判は免れない。掛布雅之というビッグネームの退任は、それだけ大きな意味をもつはずだ。
それにしても金本監督は、ここまでの大きな責任を一人で背負い込んで大丈夫なのだろうか。また、阪神球団はそこまで金本監督に責任を集約させて平気なのだろうか。
球団が監督の要望を受け入れている以上、本来その結果についての責任は球団にあるはずなのだが、なにか事が起こったとき、世間の矢面に立つのはいつだって監督だ。今回のことで金本監督が全権に近い影響力をもち、それが掛布雅之二軍監督の退任にまで結びついてしまったということが、真偽はともかく広く発信されてしまった以上、今後の金本監督に対する周囲の目はより厳しいものになるだろう。
繰り返すが、金本監督はそんな状況に自らを追い込んで本当に大丈夫なのか? 阪神球団は金本体制にそこまで依存して、いつか梯子を外さないと言えるのだろうか?
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