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「まだファン歴33年」さだまさしが紐解くスワローズへの愛と“謎”

文春野球コラム クライマックスシリーズ2020

2020/11/14
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「さださん、勝ちました! ビール掛けを終えたところです」と秦選手が明るい声でそう報告してくれました。「おめでとう!」というと何とそのあとは次々と栗山選手、広沢選手、最後は若い古田捕手に代わって熱気を伝えてくれたのです。古田選手は「おめでとう!」に答えて「ありがとうございます! さださんやりました!」と言った後、口をとがらせるようにぼそりと「それにしても『帰れ!』は無いっすよねえ!」と怒りの呟きに「確かに!」とスタジオは大爆笑。

 野村監督に代わった直後は選手達の明るさも影を潜めていましたが、この優勝をきっかけにまた明るく人懐こく、仲良しのスワローズに戻って行きました。

名誉会員がたった3人というスワローズの謎

 スワローズの魅力は選手も優しいがファンが優しいことでしょう。みんなとても「ジェントル」なのです。紳士的なところ、温かさに関して言えばスワローズファンは日本一です。移動の際、ジェントルなスーツ着用というのもスワローズが始めたものです。

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 また、球団の伝統的な良さが選手の面倒見の良さです。入団した選手を大切にしますし、引退した選手に対する愛情にも「家族的」な温かさを感じます。選手同士の仲の良さもこういう事情から生まれたのでしょう。

 今は成績もどん底ですが、選手を見ているといつ爆発してもおかしくないという可能性を、ここ数年、常に秘めています。常に秘めているのにも関わらず一向に爆発しないというのもスワローズの謎です。

 僕は2015年にファンクラブ「スワローズクルー」の名誉会員に任命されて感動しましたが、この時に驚いたのは名誉会員がたった3人であること、その3人が出川哲朗、村上春樹、さだまさし、であることの恐ろしさです。幅も底も見えない驚きの人選です。これもスワローズの謎でしょう。

石川雅規投手と ©さだまさし

 今、一番の仲良しは石川雅規投手です。毎年投手陣中心に「お疲れ会」や、年のはじめに「壮行会」などと称してみんなで食事をして大いに飲みます。残念ながら今年は新型コロナの事情からこういう宴会は出来ませんが、もはや僕のスワローズ愛は「家族愛」と言っても良いようです。

2019年の開幕セレモニーで国歌を独唱する筆者 ©さだまさし

 3年前14連敗したときに「つばめよつばめ」という歌を書きました。最後に全ての燕ファンにこの歌を贈ります。

「つばめよつばめ」詞:さだまさし

全ての試合に勝って欲しいとは
言わない思ったこともない
頑張ってるのはちゃんと知ってるが
半分くらいだったら勝てるんじゃない?
勝った負けたは世の習い
どこに負けてもいいんだ でも
自分にだけは負けたくないんだ
自分にだけは負けたくないんだ
つばめよつばめ 愛しき燕
明日こそ 勝利を我らに

良い助っ人を連れてくれば
何年か後は敵に廻る
必死で生え抜き育てても
いつしか気づけば
敵のベンチに居るんじゃない?
投手が良い時何故打てないのか
打っても何故だか打たれて負けてる
巡り合わせか運なのか
それともおいらが悪いのか
つばめよつばめ 愛しき燕
今日こそ 奇跡を我が手に

学生野球の間借りだけど
神宮の空に羽ばたくんだ
家族のように支え合う
仲良しチームもファンも人が好すぎるんじゃない?
惜しまず手を抜かないプレーで
誰に負けてもいいんだ でも
自分にだけは負けたくないんだ
自分にだけは負けたくないんだ

つばめよつばめ 愛しき燕
今こそ 勝利を我らに
つばめよつばめ 愛しき燕
今こそ 奇跡を我が手に
つばめよつばめ 愛しき燕
今こそ しあわせを我らに

◆ ◆ ◆

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