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かわいい後輩だからこその「眼中にもない」

 接戦を取れないのも悔やまれた。1点差ゲームを落とすのは大敗よりも悔しい。逆転負けも残塁も多かった。そしてチャンスを貰ってもそれを生かせない若い選手の姿ももどかしかった。

 高卒2年目の野村選手は開幕からアピールしていたけれどすぐに小指を怪我してしまって離脱。3年目で自己最多の96試合に出場した清宮選手は打率1割9分に終わった。

 2軍の鎌ヶ谷に目を向けてもファイターズ史上初の育成指名から支配下登録を勝ち取った樋口選手の活躍以外は目立って抜きんでてくる選手はいなかった。若手にチャンスを多く与えるファイターズにとってこの様子は物足りなかった。ここをピンポイントでシーズン終了後にズバッと本音で斬ってくれたのが中田選手だった。

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 毎年、シーズンが終わると監督や主要選手にマスコミ共同で総括のインタビューが行われる。中田選手は今年そこで、自分自身の活躍を振り返った後にこう話した。

「若い子たちは、個々がどうしなきゃいけないのか、チームにどう貢献するのか考えないと。今年は正直、若い子の存在に不安になるとか脅かされることは一切なかった。レギュラー陣はみんな同じ思いだと思う。他のチームを見ていると若い子がぐっと出てくるチームがやっぱり強い。もっと出てこないと」

 そして、ファーストで併用された清宮選手にはこう言い放つのである。

「相手にならない、今年は眼中にもないっていう感じ」

 この言葉、私はクスッと笑ってしまった、そしてなんとかっこいいのだろうと思った。将来はお前が俺の立場になるんだろう? 何をぐずぐずしてんだよ、と、間接的にメッセージを送る。

 一見乱暴なようでいて、この言葉は、発奮させることと本人を肯定することとふたつの要素を兼ねているのだ。ここから先もずっと相手にならないような相手ならわざわざこんなことは言わないし、ここから先、自分を脅かすような相手になってほしくない、成長を望まないような相手なら名前を出すことすら時間の無駄でしかない。かわいいかわいい後輩だからこその言葉。

 今年はシーズン終了を待たずに宮崎のフェニックスリーグが11月8日から始まった。中田選手の言う「若い子」たちは初日から試合に臨んでいる。もう11月も半ば、今年のオフはあっという間だ。どう使ってどう準備するかは自分次第。来シーズン、中田先輩の眼中に飛び込む一番最初の選手は誰か、中田先輩に「レベチ」と言わせる選手は出てくるのか、あ、その頃は「レベチ」はもう古いのか。なんだっていい、とにかく来シーズンが楽しみでたまらない。

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