名選手は必ずしも名監督にあらず。

 スポーツファンなら一度ぐらい耳にしたことがあるだろう。

 だが「名選手ゆえの名監督」が、サッカー界には多い。世界に目を移せば欧州チャンピオンズリーグ2連覇を達成したレアル・マドリーを率いるジネディーヌ・ジダン、バルセロナの黄金期を築き上げたジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ)、アトレティコ・マドリーを欧州トップクラスの強豪に仕立て上げた闘将ディエゴ・シメオネ……。現役時代、彼らはレアルの、バルサの、アトレティコの中心であり、代表でもそうだった。そして40代半ばにある今、指導者として確固たる地位を築いている。

ADVERTISEMENT

 日本にも、同じ香りを漂わせる男がいる。

 名波浩、44歳。

 ジュビロ磐田でいくつものタイトルを獲得し、日本代表では「10番」を背負って98年フランスワールドカップに出場。セリエAのベネチアでもプレーした彼は、低迷期にあった古巣ジュビロの監督に就任してJ1に引き上げ、昇格2年目の今季は上位に食らいつく健闘ぶりを見せている。チームを一つにまとめ上げる、その抜群の求心力はどこから生まれているのか――。

©文藝春秋

なぜ選手たちは名波監督に抱きつくのか

――昇格1年目の昨季は残留争いに巻き込まれましたが、今季はACL(3位以内)も狙える位置につけています。6月4日のガンバ大阪戦からは6連勝を飾りました。

「正直、想定外ですね。普通、ここまで連勝するとは思わないでしょ(笑)。サッカーは何が起こるか分からないから面白い」

――それも昨年の上位チーム、ガンバ大阪に3-0、浦和レッズに4-2、そして川崎フロンターレに5-2と、快勝しています。監督として、どうやってチームを勢いづかせたのでしょうか?

「いつも言っているチームとしてやるべきことを選手たち自身が肌で感じてくれて、プラス個々のストロングポイントを肉付けしてやってくれているのが、チームの力になっていると感じています。勝ち出してそれが自信になって、ゴールを多く取れてきている。前への推進力が全体的に生まれ出しているなって思いますね」

――今季、加入した中村俊輔選手の活躍もさることながら、浦和戦はその大黒柱が不在の中で勝ち切りました。後半途中から出場した松浦拓弥選手が2ゴールの活躍。チャンスを与えられた選手が結果を出しているのも、今年のジュビロの特徴です。

「松浦の場合、昨年までは練習での遅刻グセがあってそれでベンチ外にしたことがあったけど、今年はなくて。ただスタメンで7試合使ってみて、パフォーマンスが良くないから一度ベンチ外にしました。(活躍できたのは)松浦の気の持ちようと、パフォーマンス向上への志。それがあったから使ったときにポンと結果が出たように感じます」

――松浦選手を含め、ゴールを決めるとベンチに走っていって名波監督に抱きつくシーンが目立ちます。あの俊輔選手ですら、抱きつきにいったほど。その求心力はどう生み出しているのでしょう?

「どうなんですかね、それはちょっと分からない(笑)」