大体、今年は交流戦をやってない
ふと思い立って、この時期の文春野球えのきど監督コラムを再読してみました。そうしたら2017年は第4戦目までの割と冷静な観戦記なのですが、2018年は熱かった。《うちに勝ったくせに不甲斐ない試合をしようもんなら勘弁できない。今年は内角攻めで苦しむ柳田に「ギータやり返せ!」「絶対このまま引き下がるな」とぷんぷん怒っていた。》《「甲斐キャノン」だって自分とこの選手じゃないのに威張ってしまう。ほらね、すんごい肩だろ?》という塩梅。いやそうなんですよ本当に。こういう感覚になるんですよ。《負けたら承知しねぇ。常に俺らが見上げる高い山であれ。》
という力の入る年を経て、去年のコラムはこんな球界現状分析がありました。
《子どもの頃、日本シリーズというのは巨人がパ・リーグ代表チームを打ち負かすものだと思っていた。それが今、形を変えて(だいたい)ソフトバンクがセの代表を打ち負かすものになってきている。今、大学生高校生くらいの層は「(だいたい)ソフトバンク王朝」の時代しか知らないと思う。》
《「打倒巨人」でありながら巨人の強大さを無限延長させてしまうループ構造が終わったように見える。》
これが《パのリアリティ》と書かれていることに改めて注意を引かれたのです。プロ野球のリアリティ、じゃないんだ、まだ。実際、プロ野球死亡遊戯こと中溝康隆さんの著書『令和の巨人軍』には《ファンは心のどこかで球界の中心にいるという「盟主の覚悟」までは棄てないでほしいと願うのだ》という一節がありました。原監督が折に触れ「支配下70人枠撤廃」などを言い、さらにそれが雑談ではなく「提言」扱いとなるのも、そういうことなのでありましょう。
ジャイアンツの報じられ方といえば、何となく気になったことが今年もう1つありました。「菅野智之開幕13連勝」です。いやもちろん立派な記録ですよ。でも田中将大が24連勝してますもん、たまたま開幕投手ではなかっただけで。そういう人が7年前にいたのに、「プロ野球史上初の記録」と強調されてもあんまり盛り上がりにくいというか……。
大体、今年は交流戦をやってないんです。13連勝といったって、その間に涌井秀章と投げ合っても吉田正尚と対戦してもいないですよね。ピンチの場面で栗山巧を打席に迎えたり和田康士朗に走られたり、近藤健介に粘られたり。そういうのはなかった訳ですよねっ。
19日の道新スポーツ(サンケイスポーツ)を見たら、江本孟紀氏が《人気のソフトバンク、実力の巨人》と仰っていました。これは聞き捨てなりません。もしも千賀滉大やリバン・モイネロを打ち崩し、柳田悠岐や周東佑京を封じたならば、その時は素直にジャイアンツを称賛します。もしも、の話ですけれども。
だから、がんばれ。ホークス!
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム 日本シリーズ2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/41475 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。