ひいきチームが出ていない日本シリーズを、皆様はどういうスタンスで観戦なさっているでしょうか。私は今現在ホークス100%応援モードになっているのでありますが、これはジャイアンツ敵視というのとは違うのです。仮に今年セ・リーグもCSがあって、それでタイガースが勝ち上がったのだとしても同じこと。要は「パ・リーグの方を応援する」なのです。

 といっても「セ・リーグなんか嫌いだ!」という話ではないので、ぐらつきかかることもあります。2017年はベイスターズ、2018年はカープがセ・リーグの代表で、一方パ・リーグは安定のホークス。判官びいき発動というか、「今年はどっちが勝ってもいいかな……」と思いかけていたのです。とはいうもののいざ試合が始まってみると、結局いつも通りでした。だって特に2018年なんか、カープが盗塁を試みまくってはことごとく甲斐キャノンの餌食になる訳ですよ。それで次第に「まだ走るか! 甲斐キャノンをなめるな!」的な気分が沸々と湧いてきてしまったのでした。いや判ってます。判ってたんです。要するに積極走塁なだけだと。でも観戦中の気分って、理性とはどこか無縁のところもありますよね。ね。

甲斐拓也 ©文藝春秋

あそこより強いチームなんてあるものか

 では今年はというと、ジャイアンツとホークスの日本シリーズは過去11回あり、結果はジャイアンツの9勝2敗。よって判官びいきの気分も当然ホークス寄りです。え? 去年はホークスがジャイアンツに4連勝してるのにって? 見解の相違です。

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 いや白状しますと、ファイターズの貴重な日本シリーズ歴の中でジャイアンツに3度も負けてるというのが大きいんです。1981年、2009年、2012年といずれも2勝4敗。特に北海道移転以降は、2007年にもドラゴンズに負けたので6年間で実に3度、日本一になり損ねたことになります。パ・リーグでファイターズだけが日本シリーズで負ける、なんて言われたりしたんですよねえ。日本シリーズに出られていることがまず昔を思えば凄いじゃないか、ファンまでもが何もそんなパ・リーグの面汚しみたいに言わなくても、と釈然としなかったものでした。

 結局2006年の次に日本一になれたのが2016年のこと。丸10年かかりました。今スポーツ新聞に「現在パ・リーグが日本シリーズ7連勝中」とか何とか書かれているのを見るにつけても、あの時負けなくてよかったなあとつくづく安堵するのです。

 この2016年の日本シリーズ直前、「中田会」がありました。交流戦で広島に行く際に若手選手達が中田翔の実家にお呼ばれする恒例行事なのですが、この時はいわば決起集会的なものということで、テレビ北海道のカメラが入っていました。で、後日の番組で観た宴会の席上、西川遥輝と中田翔がこんなやり取りをしていたのでした。

「広島とソフトバンクやったらどっちが強いっすか?」「100、ソフトバンクやろ」

 100とは100%ということでしょう。このあと2月の練習試合でのカープの印象が強かったらしい西川遥輝が食い下がり(なぜか交流戦の話は出ませんでした)、中田翔も「総合力的に広島強いよね」と同意したのですが、それでも最初に訊かれて即答したのが「100、ソフトバンクやろ」だったのは印象的でした。これはカープを見くびっている訳では全然なく、彼の中でとにかくもうホークスは強い、一番強いという実感だったのだと思うんです。あそこより強いチームなんてあるものかと。