文春オンライン

ロペス、パットン、石川雄洋……ベイスターズをひとつにしてくれた選手たちに、ありがとう

文春野球コラム 日本シリーズ2020

2020/11/24
note

ファームの練習場で石川雄洋にかけられた言葉

「また、実況してくれますか?」

 2005年の3月頃、ルーキーだった石川雄洋選手にかけられた言葉です。前年夏、神奈川大会を制した横浜高校の3番打者・石川選手の描写には、熱が入っていたと思います。決勝の神奈川工業戦、アウトコースに外されたボールに飛びついて決めた先制スクイズは絶賛した覚えが。まだプロ野球の門を叩いて間もない石川選手がファームの練習場で私の姿を見て、発した一言でした。

 その後レギュラーを掴み、DeNA初代キャプテンとなった石川選手。私もひたむきなプレーを伝え続ける中、2019年8月4日、横浜スタジアムでのジャイアンツ16回戦。6回、桜井投手から一塁線を破る3塁打で通算1000安打達成。この瞬間、中継スタッフ皆が喜びました。描写する私の隣にいたスコアラーも手を叩いています。

ADVERTISEMENT

 試合後のインタビュー、筒香キャプテンがお祝いのケーキを持ち寄る姿、皆の笑顔を目の当たりにして、球場ごと一つになれたチームを実感した日です。

 私の頭の片隅には「約束通り、実況していますよ」の思いがよぎりました。まだまだ伝え続けたい選手。たとえチームは変わっても、これからも実況させてください。

石川雄洋 ©文藝春秋

“野球の神様”を身近に感じさせてくれたラミレス監督

 私が始球式を担当した当日、ラミレス監督からも拍手をいただき感激しました。優勝こそ手が届きませんでしたが、取材する側への誠実なラミレス監督の対応に心惹かれ、5年間の戦いは心躍りました。

 特に横浜スタジアムでは、諦めさえしなければ何かが起こる試合ばかり。同点のノーアウト2塁がそのまま2アウトになったとしても、そこからタイムリーヒットが出る展開に何度も実況の声を張りました。苦戦しても「どう始まるかではなく、どう終わるかが大事」という信念を実現し、野球の神様の存在を身近に感じました。

 新しいベイスターズの野球は、当然進化するはず。横浜高校のエースで生粋のベイスターズファン、今永投手に憧れストレートの質に磨きをかけるドラフト3位の松本隆之介投手。横浜高校時代ハートの強さを前面に出し、現イーグルスの藤平尚真投手との2本柱だった育成1位の石川達也投手。2年生の時、私が実況を担当した夏の県大会2回戦で全球ストレート2安打完封を果たした、育成2位の横浜隼人高校・加藤大投手。地元神奈川出身のルーキー達も加わります。

神奈川にゆかりの深いルーキーたち。ドラフト3位の松本隆之介投手(右)と育成2位の加藤大投手(右) ©吉井祥博

 指揮官が変わっても、野球の神様はどこかで変わらず微笑み続けてくれると信じています。

 そう思うのは、他でもありません。ラミレス監督時代の象徴的な場面の一つ、あの2017年8月カープ戦の3夜連続サヨナラ勝ち。好走塁で高城選手がサヨナラのホームインした3夜目。実況した私の隣で、驚きと穏やかな笑みを見せてくれた解説者は三浦大輔新監督ですから。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム 日本シリーズ2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/41476 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

ロペス、パットン、石川雄洋……ベイスターズをひとつにしてくれた選手たちに、ありがとう

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!