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「まだやれる、でも……」ファイターズ・浦野博司投手の幸せな去り際

文春野球コラム 日本シリーズ2020

2020/11/24
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日本一の興奮を手放しで喜べなかった上沢直之との絆

 セレモニーは、同学年の中田選手、同期入団の渡邉選手、宮西投手、有原投手、上沢投手、そして中嶋聡さんからも花束が贈られた。上沢投手は泣いていた。あの2016年、同じくリハビリで1年が終わったのが上沢投手だ。彼は肘の手術をしていて、この二人はあの日本一の喜びを自分のものとしては味わっていない。あの興奮を手放しで喜べなかった選手たちだ。ここにも絆だ、あの時間を共有した絆がこの二人にはある。

 二人がゲストのトークショーの司会をしたことがある。終始楽しそうで、4つ年上だけど浦野投手がどう見ても押され気味なのがなんとも魅力的だった。出番を待つ扉の前でもずっと二人でじゃれ合っていて、相思相愛の様子が伝わった。特別な存在だったと思う。セレモニーの上沢投手の涙には悔しさもあるだろう。浦野投手は自分が戦力に加わっての日本一への思いを果たせなかった、その思いは上沢投手が間違いなく受け止めているはずだ。

 背番号17番、7年で101試合、18勝13敗7セーブ。まだやれるじゃないか、中田選手だけでなくファンもみんな思ったあの最後のマウンド。でも、試合に出続けるのがプロ野球選手、僕にはもうそれは出来ない、だから終わらせる。去り際は他人が口出し出来ることじゃない、各々の美学だ。

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 まっすぐにスッと背筋を伸ばしてサインを見る姿が好きだった。浦野投手を応援出来た7年間を自分も誇りに思いたい。在籍年数と同じ7回宙に舞った浦野投手、素晴らしく幸せな引退セレモニーだった。

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