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「ギャル界のツッコミマシーン」みちょぱが教えてくれる、私たちがギャルに抱く“幻想”

2020/11/29
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批評性が光るみちょぱのツッコミ

「え? あると思ってたんですか?」(『アメトーーク!』2019年10月3日)

 もちろん、小木も本気で彼女を狙っているわけではない。番組の流れの中で発された、ある意味では冗談だ。が、むしろ冗談を交えているからこそ、そこに織り込まれた一方的な性的まなざしの失礼さは指摘しづらくなる。そんなまなざしを、みちょぱは「あると思ってたんですか?」と相手に問い返すことで浮き彫りにし、突き返す。性的に見られる側から、性的に見る者を見る側への反転。量産される彼女の鋭いツッコミの中には、時折このような批評性が光る。

 みちょぱはボケ役もこなす。特に、ヤンチャな思春期時代のエピソードは鉄板で、テレビに出始めのころは、「おはたい」に代表されるエピソード(当時付き合っていた彼氏が早朝に家に来た警察に逮捕され少年院に送られたという話。「おはようございます逮捕」略して「おはたい」)を繰り返し語り、笑いを誘っていた。

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©時事通信社

 そして、ヤンチャ時代のエピソードが認知されるようになった今では、彼女は過去の武勇伝を尋ねられると次のように切り返す。

「何が聞きたいです?」(『サンデー・ジャポン』TBS系、2020年6月21日)

 すでに過去のエピソードは広く知られている。同じ話を繰り返しても笑いは生まれにくい。そんな中、みちょぱはむしろエピソードの認知度の高さを逆手にとって、「(あの話もこの話もありますが)何が聞きたいです?」という具合に笑いを搾り取りにいくのだった。

 ツッコミ役を担い、ボケ役も引き受けるみちょぱ。もちろんフリもやればガヤもやる。その状況判断の鋭さを武器にバラエティ番組でオールマイティな活躍を見せる彼女が、テレビで引っ張りだこになるのは当然だろう。近年、主に後輩芸人が先輩芸人に気に入られることを“ハマる”と表現する場面をよく見るが、みちょぱは個別の芸能人というより現在のテレビそれ自体に“ハマって”いる状態といえるかもしれない。

やりたいことを無理せずに

 では、現代の私たちはギャルに何を期待しているのだろうか。ここではみちょぱの一見矛盾するスタンスに注目したい。

 一方で、みちょぱは“自由”に振る舞う。売り出し中の女性タレントの多くがNG無しを標榜する中、彼女はさまざまなNGを明言する。体を張るのはNG。心霊ロケもNG。グラビア系の仕事もNG。このスタンスは今のように売れる前から変わらない。いわば自分のやりたいことを基準に無理せず仕事を選んでいる格好だ。それでテレビに出られなくなっても問題ないと彼女はいう。