昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「トランプを支持するか」だけでは見えてこないもっと大きな問題

ロン・ハワード(映画監督)――クローズアップ

2020/11/29

source : 週刊文春

genre : エンタメ, 映画

「僕は、あくまでこの家族の歴史に注目したかった」

「グレンとは前にも仕事をしたことがあるし、僕らは友達。彼女が、原作本を読んでとても気に入ったと言うので、『実は今、脚色作業をやっているんだよ。読んでみる?』と聞いたのさ。一方で、エイミーは、ちょっと説得に時間がかかった。このキャラクターは数々の苦痛を経験し、暗いところに行くことを要求される。そんな気持ちに一定期間浸るのが嫌だったようだね。だが、最終的には、この話を通じて、その内情を社会に見せ、癒すことができるのではないかと、受けてくれた。それは僕の求めることでもある」

Netflix映画『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』独占配信中

 トランプが大統領選で当選した2016年に出版されたこともあり、原作本は、トランプ支持者のリアルを語るものとしても注目された。しかし、映画版は、政治的なことにはほとんど触れず、家族の物語に焦点を当てている。もちろん、それは意図的だ。

「たしかに、原作本はアメリカや、特定のエリアに住む人たちを、政治的な視点から見ることもする。でも、僕は、あくまでこの家族の歴史に注目したかった。もっと大きな問題は、この家族を通じて見えてくる。そのためにも、その家族をリアルに、忠実に描くことが大事だった。それに、僕らみんなに通じることは多いのだとも伝えたかったんだよ。もちろん、このコミュニティに根付いた、特有の困難、障害はある。だけど、僕らはみんな人間。そういった問題に直面することは、誰にだってあると言いたいんだ」

Netflix映画『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』独占配信中

「配信は、観客と作り手にとって良いこと」

 コロナがアメリカを直撃する前の今年1月、サンダンス映画祭でお披露目された「Rebuilding Paradise」は、本来ならば劇場で上映されるはずだった。「ヒルビリー・エレジー~」は最初からNetflixだったものの、賞狙いと位置づけされるだけに、もしもロサンゼルスやニューヨークシティで普通に映画館が開いていれば、配信に先立って劇場公開されたはずだ。しかし、やや意外なことに、ハワードは、そのことをそれほど残念に思っていないようである。

「配信は、以前から映画館ビジネスに脅威を与えていた。コロナはそれを加速したにすぎない。これからも、作品が配信に直行することは続いていくだろう。だが、映画館がなくなるとは思わない。ある時点で、観客は、映画館で映画を見たいと思うようになり、声高々にそう伝えるはずだ。いつだって、決めるのは観客なんだよ。スタジオやフィルムメーカーは、観客の望むことをするんだ。それに、配信という道ができたことで、もっとたくさんの、幅広い作品が入ってくる余地が生まれ、特定の人々にしか興味がないような映画も作られるようになった。それは建設的なことだ。つまり、大変になったのはビジネスを考える人たちで、観客と作り手にとっては、良いことなのさ」

 

 たしかに、大都市でしか上映されなかったかもしれないこれらの映画を、どこでも、誰でも見られるのは、平等で、良いことと言えるのかも。

ロン・ハワード/Ron Howard 1954年、アメリカ生まれ。2001年「ビューティフル・マインド」で第74回アカデミー賞監督賞・作品賞受賞。映画では「コクーン」「バックドラフト」「アポロ13」「ダ・ヴィンチ・コード」、テレビドラマ「24 TWENTY FOUR-」ではプロデューサーを務めヒットメーカー。

INFORMATION

映画「ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-」
https://www.netflix.com/jp/title/81071970

この記事の写真(5枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー