大混乱におちいっていたアメリカ大統領選挙だが、ようやくバイデン前副大統領が当選に必要な選挙人の数を獲得した。
しかしトランプ陣営は接戦だったペンシルベニア州など、いくつかの州で開票作業をめぐって提訴。法廷闘争での逆転を目指しており、トランプ大統領自身もTwitterでみずからの「勝利」を訴える姿勢を崩そうとしていない。
こうした混乱を選挙前から予想していたのが、アメリカ研究が専門の渡辺靖・慶應義塾大学SFC教授だ。10月下旬の段階で次のように話している。
「トランプ陣営の戦い方は、リングの上で負けそうなら、リングの外に戦いの場を移すというもの。ですから選挙結果が不利なものになれば、選挙に不正があったと主張して、いろんな州で訴訟を起こすでしょう」
分断を象徴する「Qアノン」の存在
実際、事態はそのように推移している。トランプ陣営の訴えが認められれば、いくつかの州で票の集計をやり直すケースがありえるだろう。
しかしバイデン氏は獲得した選挙人の数を上積みしている。たとえトランプ陣営が法廷闘争で一部、勝利するようなことがあっても、現在の趨勢ではバイデン氏の勝利が確実だと見られている。
そのバイデン氏は11月7日、みずからの勝利を宣言したが、祝賀ムードを抑えつつ、こう発言している。
「分断ではなく、団結させる大統領になることを誓う」
その上で、こうも語った。
「互いを敵と見なすのは止めなければならない。私たちは敵ではない。アメリカ人だ」
「アメリカの傷をいやすときだ」
次期大統領がそのように国民へ語りかけなければならないほど、アメリカの分断は激しいのだ。実際、選挙の大勢が明らかになった段階でも、アメリカの各地で、バイデン支持者とトランプ支持者のこぜりあいが起きている。
こうしたアメリカの分断を象徴するもののひとつが、選挙前に注目された「Qアノン」という陰謀論者たちの存在だ。