民主主義や多様性などインチキ
「これまで民主主義とか多様性を信じてきたけど、それで割を食ったのは自分たちだ。そんな理念はすべてインチキで、もはや信じない。別の真実を探していこう――こうしたQアノンの被害者意識、現状を拒絶する感覚が、トランプ氏の支持基盤の持つ意識と重なっていることは明白です」
では、Qアノンと重なる、トランプ支持者のスタンスとは何か。渡辺教授は前回の大統領選を振り返り、こう指摘した。
「トランプ旋風の原動力となったのは、経済的に劣勢に立たされた人々のグローバリズム(自由貿易、移民の流入、多国間枠組みなど)への怨念でした。
工場がアメリカから他の国へ出て行ったため、製造業の雇用が失われていきました。同時に英語を話さず、宗教も違う人たちが移民としてアメリカに流入した結果、雇用が奪われたし、職を失わないまでも実質賃金が下がっていった。
『アメリカはグローバリズムの食い物にされた』『アメリカはグローバリズムの被害者だ』というトランプ氏の世界観が支持されたのです」
トランプ旋風とサンダース現象の共通点
こうしたトランプ氏の世界観とQアノンの世界観が重なっているのだ。
さらに、Qアノンとトランプ支持者に共通するのは、アメリカ社会を動かしてきたエリート、エスタブリッシュメントたちへの反感だ。
だが、この反感は保守派に限ったものではないという。
「そんな人たち(注:エリートやエスタブリッシュメント)に従ってきた結果、グローバリズムが進み、自分たちは大変な目にあっている――こうした意識は、すでに触れたようにトランプ現象の原動力なのですが、じつは民主党で生じたサンダース現象の原動力でもあるのです」
つまり、反エリート、反エスタブリッシュメントという共通点はあるものの、リベラル派は、どんどん左のほうへ寄っていき、分断が拡大していったのである。
一方で、共和党も「トランプ的な世界観にかなり支配されている」と渡辺教授はいう。