昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

米大統領選 最大の敗因は“コロナ”だった…それでも「トランプ再選」の可能性がまだ消えないワケ

2020/11/09

 2020年、パンデミックが人類を襲った。そして、世界最高権力者の首さえもすげ替えた――。

 大接戦となったアメリカ大統領選は11月7日、民主党のジョー・バイデン前副大統領が共和党のドナルド・トランプ大統領を破って勝利した。政権奪還を目指してきたバイデン氏は地元の東部デラウェア州で演説し、高らかに勝利宣言をした。民主党支持者が多い大都市のニューヨークや首都ワシントンなどでは、歓喜や歓声に包まれた。

 その一方、トランプ大統領は敗北を認めず、大統領選で不正行為があったとし、あくまで法廷闘争を続ける構えを見せている。

法廷闘争を続ける構えを見せているトランプ氏 ©AFLO

 バイデン氏は、ペンシルベニア州やジョージア州など激戦州で最後の最後までトランプ氏と争い、地滑り的勝利を収めたとはとても言い難い。バイデン氏の得票数は9日までに史上最多の7500万票を超えたものの、トランプ氏も7100万票以上を得票した。全米の総得票数で相手候補を上回っても選挙人数で負けることがあるだけに、予断を許さない状況だった。現に前回2016年の大統領選でも、ヒラリー・クリントン氏の票がトランプ氏より286万票上回っていた。

トランプが負けたのはバイデンではなく……

 こうした大接戦の大統領選の中、トランプ氏はバイデン氏に負けたのではなく、新型コロナウイルスという人類の天敵である感染症に負け、力尽きたと筆者はみている。

 アメリカでは3月から新型コロナウイルス感染者が右肩上がりで急激に増え始めた。その後の8カ月間で感染者数1000万人以上、死者数25万人近くに及んでいる。このコロナ禍がなければ、トランプ氏は激戦州でも勝利し、再選が果たせていたとみている。

勝利宣言を行ったバイデン氏 ©AFLO

 コロナ禍前までは、大型減税や規制緩和を前面に出したトランプ政権の下で、アメリカ経済は拡大を続けていた。雇用も創出され、オバマ政権時代の低成長によって置き去りにされていた人々の賃金も引き上げた。多くのアメリカ人が恩恵を受けつつあった。しかし、新型コロナウイルスの襲来でそれらが帳消しになった。2020年4~6月の実質GDP成長率は前期比年率マイナス31.4%と、統計を開始した1947年以来最も大きな落ち込みとなった。

 選挙予測で定評のある米統計分析サイト「ファイブサーティーエイト」(米選挙人団の選挙人538に由来)によると、3月初め時点では、トランプ氏の支持率はバイデン氏にわずか4.1ポイントの差しか許していなかった。しかし、大統領選直前の11月初めには、その2倍以上の8.4ポイントまで差を広げられていた。