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2020/12/05

 有名なのは2012年の全日本選手権の“ブーイング事件”。ショートプログラムで羽生がトップに立ち、高橋がフリーで追い上げたが届かず優勝は羽生の手に。その大会で、羽生に対して一部ファンからブーイングが出たのだ。

「基本的にフィギュアスケートのファンは、自分の応援している選手以外にも拍手を贈る人が多く、ブーイングが起こることはほとんどない。それだけに、羽生へのブーイングが響いた瞬間、会場は騒然となりました」

羽生に対して異例のブーイングが起きた2012年全日本選手権 ©文藝春秋

 そして2人のファンの権力関係が完全にひっくり返ったのが、2014年のソチ五輪。羽生が金メダルを獲得し、名実ともに日本のエースに定着したのだ。

「金メダルによってフィギュアスケートファン以外にも広く知られるようになり、国民的スターの地位を築いた。するとファンも立場が逆転したのです。今度は羽生ファンが公然と高橋ファンを攻撃しはじめました」

ソチ五輪での金メダルは、羽生結弦の地位を絶対的なものにした ⒸJMPA

「3位。アイスダンスで最下位ですよ」

 立場が入れ替わっても、高橋がシングルを引退しても、対立感情は消えていない。高橋のシングル引退以降、高橋ファンの中には「羽生を倒してくれるかもしれない存在」として宇野昌磨(22)や鍵山優真(17)の応援に回った人も少なくない。今回のNHK杯は、あらためてその確執の根深さを示した。

 NHK杯の放送中から、ネット上では「T」「H」などの隠語を使って相手の名前を言うことすら避けながら、当てこすりの応酬が繰り広げられた。

「まあこうなるとは予想していましたが(苦笑)、羽生さんのファンとしてはやっぱりちょっと引けない部分がある」というのは、とある羽生ファンのメディア関係者。

「大会前も大会中も大会後も、高橋・村元ペアの特集をいっぱいやってましたよね? アイスダンスではまだなんの実績もないのにおかしくないですか? それでも成績がよかったら分かりますけど、実際は3位。アイスダンスで最下位ですよ。なのに優勝したカップルより大きく扱われているなんておかしいでしょう?」

平昌オリンピックで連覇をなしとげた羽生結弦 ⒸJMPA

 とはいえ、シングルでの実績や、フィギュアでは異例の30歳を超えての異なる種目挑戦に価値があることは当然だ。海外の選手ならばもう少し素直に受け入れることもできるだろう。それでも、高橋については感情がついてこない。