これには理由があると私はいつも思っている。
それは日本人が二元論での思考が出来ないということだ。欧米人はキリスト教・ユダヤ教など一神教の宗教を持ち、物心つく頃には『神の世界』と『人間の世界』という二元論が自然と体内に組み込まれている。
『神の世界』を『理想』と置き換えることで、様々な哲学や思想が生まれ、現実に無いものを創りだすというモチベーションが生まれる。それが画期的なモノ(発明・製品)を生み出すことに繋がる。
しかし、日本人は一神教ではないため『唯一絶対=理想の世界』があるというビジョンを持つことがない。常に現実世界の中の一次元思考に価値が置かれる。
ファブレス、アウトソーシングが世界の製造業の常識に
21世紀に入り、SONY製品があっという間にアップルに市場を席巻されてしまった現実の裏側には「全く誰も想像しなかった“理想の製品”」をスティーブ・ジョブズが創造し、それによって世界的な需要が生まれたことがあった。そしてアップルは製造・量産のあり方でも自ら製造ラインを持たないファブレスという形の革命を起こした。
今やファブレス、アウトソーシングは世界の製造業の常識となっている。そしてこれこそがグローバリゼーションの本質だったのだ。
20年前、ファンドマネージャーとして台湾新竹の新興エレクトロニクス企業を訪問した時、社長や幹部たちの英語の上手さに驚いた記憶がある。全員ネイティブのような流暢な英語を話す。その後、台湾がファブレスやアウトソーシングで世界の生産拠点となったのは英語でのコミュニケーション能力の高さに大きな理由があったと確信している。
半導体市場のシェアは50%以上から8%に激減
今や2017年の世界のファブレス半導体企業の売上高トップ10(第1四半期)に台湾企業は3社もランクインしている(アメリカ6社、ドイツ1社)。かつて世界の半導体市場の50%以上を占めていた日本企業のシェアは今やわずか約8%にまで落ち込んでしまった。
目の前にあるものの需要変化に柔軟な対応力を有する日本。その強みも90年代以降のグローバリゼーションの波を乗り切ることが出来なかった。
台湾と日本は同じアジアの国ではあるが、台湾は儒教の影響が強く、「家族や身内」と「社会」という二元論的思考法を用いるといわれている。
国際教育研究所(IIE)の調査によれば、米国への留学生は中国が33万人近いのに対し、日本はわずか1万9000人だ。人口比に換算すると、台湾からの留学生の約6分の1である。日本はますますガラパゴス化の中で自ら取り残されていっているかのようだ。
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のシャープ買収劇の下地は私が新竹で驚いた20年前から着々と進行してきた。日本の栄えある「モノづくり復活」がガラパゴス限定であってよいはずがないのだ。