終盤の泣きのシーンは「三浦春馬の真骨頂」
――三浦さんは俳優として、どのような形で可能性を広げていったはずだと思いますか。
田中 日本を背負って立つ役者。時代劇ができて、立ち回りができて、運動神経が良くて、ルックスも良い。そして、なにより懐もでかい。現場でみんなが口々に言っていたんだけど、これから日本の時代劇を引っ張っていくのは彼だって。それぐらい迫力があったし、その力を証明してくれた。また「三浦春馬ってこういう芝居するんだ」っていう瞬間にも出くわしました。
終盤の泣きのシーンは、その真骨頂じゃないですかね。通常、泣きのシーンというのは気持ちを作ってもらって長回しのワンカットで撮るんです。でも、しばらく引きでやっていくうちに春馬君の並外れた集中力や演技が分かってきたので、「もう一回、寄りで撮って同じ芝居ができる?」って訊いたら「やります。できます」と。結果、引きでも寄りでも見事に同じ芝居をしてくれた。
僕らは寄りと引きのあるシーンだと演技の違いが出てしまうから、それを観客が感じないようにそばにいる人物や話をしている相手の顔なんかを間に入れるんです。いわゆる、切り返しってやつですね。だけど、今回はなにも入れずに春馬君の泣きの演技を捉えた引き画と寄り画だけで繋いでいるんです。それが可能になったのも、彼が見事なまでに同じ演技をしているから。もう、切り返しを入れたら失礼になる見事な演技。編集マンも「監督、これはすごいよ」って唸るくらいでした。
「どうして春馬君ってそんなに真っすぐなの?」
――お話を伺って、三浦春馬さんが稀有な役者であった一面にあらためて気づかされます。
田中 僕、最後に春馬君と焼き肉を食べに行ったんですよ。メールで「行こうね」「行きましょう」とやり取りしていたんだけど、なかなかお互いのタイミングが合わなくて。ずっとそんな状態が続いていたけど、最後の最後でふたりだけで行くことになったんです。現場以外で会う春馬君ってどうなのかと思っていたら、やっぱりそのまんま。変わらない。僕は思わず春馬君に「こんな質問しておかしいけど、どうして春馬君ってそんなに真っすぐなの?」って訊きましたよ。
そうしたら、笑いながら「いやー、そんなことないですよ。僕だっていろいろあるんですよ」と答えていましたね。ほんと、真っすぐでいいヤツですごい役者ですよ。先日の試写会で蓮佛さんに会った時、現場でいろいろと苦労をかけたので彼女に謝ったんです。すると「春馬君がメールと電話で『監督がごめんねって言ってくれてたよ』って伝えてくれました」って。その瞬間、春馬君とごはんを食べた時に「蓮佛さんに謝らなきゃいけないことがあるんだ」と言ったことを思い出したんです。キャスティングのコーディネートだけじゃなくて、そんなことまでしてくれていたとはね。そういった話が後からどんどん出てくるんですよ。そんな俳優、普通はいないですよ。
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