映画『天外者』で、薩摩藩士から明治維新後の新政府下で参与・外国事務局判事、大阪府県判事などを歴任した後、実業家に転身、大阪を拠点に日本近代化の礎を築いたといわれる五代友厚役を熱演した三浦春馬さん。坂本龍馬役の三浦翔平さんとは役柄と同じく、共演したドラマ『ごくせん』(2008年)以来の「盟友」だという。岩崎弥太郎役の西川貴教さんら“傑物”をたばねる主演・座長として見せた責任感ある姿と、その合間にのぞかせた三浦春馬さんの素顔とは。監督の田中光敏さんが明かす。(全2回の2回目/#1から続く)

(左から)岩崎弥太郎役の西川貴教さん、坂本龍馬役の三浦翔平さん、五代友厚役の三浦春馬さん

◆ ◆ ◆

三浦春馬さんから「お前、坂本龍馬やらないか?」

――三浦さんは主演にして“座長”でもあったとのことですが、座長として共演したキャスト陣とはどのように接していましたか?

ADVERTISEMENT

田中 現場に入る前から座長でしたね。舞台挨拶やイベントで蓮佛美沙子さんに会ったら「事務所からオファーの話が来る前に春馬君から連絡があって、『今度、一緒に映画やらないか? こういう役なんだけど』って声かけてくれてたんですよ」と教えてくれました。(三浦)翔平君も一緒で、正式にオファーがある前に「お前、坂本龍馬やらないか?」って春馬君が声を掛けてくれていたみたいで。

 たしかに僕が春馬君と会うたびに「坂本龍馬の役、翔平君でどう?」とか「五代の妻だった豊子に蓮佛さんって、どうだろうか?」と相談をしていたんです。まさか、裏でキャスティングのコーディネートまでしていてくれたなんてね。僕はそんなことをぜんぜん知らなかったので驚きました。

五代友厚の妻・豊子を演じた蓮佛美沙子さん

――三浦翔平さんと三浦春馬さんはプライベートでも親交が深かったようで、ふたりの掛け合いなどにもそれがうまく出ていたように感じました。

田中 クランクインの2カ月前かな。時間がある時に撮影所へ集まってもらって本読みをするわけですけど、せっかくだから小屋を借りてちょっとしたリハーサルもやっていたんです。でも、忙しい方ばかりだからどうしても誰かが抜けることになる。1回目か2回目に翔平君が来られなくて、ちょっと気になっていたんですよ。

 その帰り際に春馬君が「監督、大丈夫ですよ。僕、ちゃんと東京に帰ってから翔平とリハーサルしますから」って言ってくれて。次のリハーサルで翔平君が来て、春馬君との掛け合いのシーンをやってみると良い感じに作り込んできているわけですよ。「翔平君、本読みうまいじゃない」と声を掛けたら、カラオケかどこかで「4時間ぐらい練習しましたよ」って教えてくれて。それは頼もしいなと思いましたね。